京王電鉄から、2024年度「駅別一日平均乗降人員」ランキングが発表されています。新宿がトップを維持する中、渋谷や吉祥寺といった主要ターミナルの数値には、大規模な再開発の影響が色濃く現れています。本記事では、京王線、相模原線、井の頭線の各路線ランキングを詳細に分析。記事後半ではコロナ禍からの需要回復が見られる2021年度から2024年度までの過去4年間のデータを比較し、乗降客が急伸したトップ3駅の動向を分析します。特に、新宿西口地区の大規模再開発による影響を受けた初台駅の伸び(約33.6%増)や、リニア中央新幹線の駅設置を控える橋本駅の動向など、「数字の裏側にある京王沿線のトレンド」を深掘りしてお届けします。

京王電鉄の輸送人員と各駅での乗降人員の動向

京王電鉄は、新宿を起点に多摩・八王子方面へ延びる本線と相模原線、さらに渋谷と吉祥寺を結ぶ井の頭線を中心に、東京西部の交通を支えています。通勤・通学の足としてはもちろん、週末は高尾山や多摩動物公園、味の素スタジアムなど観光・レジャー路線としても親しまれています。

京王電鉄の路線案内図(出典:京王電鉄)

今回は、京王電鉄が発表をした2024年度(2024年4月~2025年3月まで)の駅別一日平均乗降人員の数字を中心に見ていきたいと思います。ここ10年での京王電鉄の輸送人員の推移は以下のようになっています。
リモートワークという働き方が新しく登場して職場環境そのものがが大きく変化したこともあり2019年以前には戻っていないものの、2020年以降は年々増加傾向にあるのがわかります。

京王電鉄の輸送人員・旅客運輸収入の推移(2015年度~2024年度まで)

京王線(本線系統)でのベスト&ワースト駅は?

まずは、京王線の本線系統に関してのベスト5駅とワースト3駅です。

京王線(本線系統)【ベスト5】
1位 新宿 670,239人
2位 調布 118,575人
3位 分倍河原 85,928人
4位 府中 81,516人
5位 千歳烏山 79,689人

京王線(本線系統)【ワースト3】
1位 長沼 3,840人
2位 百草園 7,434人
3位 平山城址公園 7,740人

予想通り、京王線と都心との連結ターミナル駅にあたる新宿駅が1位です。調布が2位に入りました。相模原線への乗り換え駅として利用が多く、郊外と都心を行き来する人の流れを支えています。南武線と接続する分倍河原も上位に入りました。

調布駅

相模原線のベスト&ワースト

次は、調布から分かれて橋本をまで結ぶ、京王相模原線でのランキングです。

【ベスト3】
1位 橋本 88,419人
2位 京王多摩センター 78,801人
3位 南大沢 53,927人

【ワースト3】
1位 京王よみうりランド 14,826人
2位 京王多摩川 14,983人
3位 稲城 19,257人

JR線との乗り換え拠点となる橋本がトップに立ちました。
橋本は将来のリニア中央新幹線「神奈川県駅(仮称)」の設置予定地(相模原市緑区・橋本駅徒歩3分)にも近く、すでに現地では工事が進んでいます。JR東海や神奈川県による現場公開イベントも行われており、開業時期はまだ未定ながら、広域アクセスの拡大や周辺再整備の進展によって、交通の要所としてさらに注目が高まりそうです。

橋本

京王多摩センターは、多摩ニュータウンの中心に位置する代表的なターミナル駅です。駅周辺にはサンリオピューロランドをはじめ、ショッピングモール「ココリア多摩センター」や「丘の上プラザ」などの商業施設が集まり、週末は家族連れや観光客でにぎわいます。また、小田急線・多摩モノレールとの乗り換え駅でもあり、沿線からのアクセス拠点としても機能しています。企業オフィスや大学キャンパス、行政機関も立地し、ビジネスと生活の両面で人の流れが安定しています。

京王多摩センター

京王井の頭線のベスト&ワーストは?

井の頭線【ベスト5】
1位 渋谷 286,940人
2位 吉祥寺 127,213人
3位 下北沢 107,602人
4位 明大前 39,396人
5位 久我山 38,168人

【ワースト3】
1位 井の頭公園 6,657人
2位 新代田 8,765人
3位 池ノ上 9,179人

渋谷と吉祥寺が上位。下北沢は小田急線との乗り換え駅としての利便性に加え、若者を中心に買い物や散策などで訪れる人が多く、3位に入りました。

渋谷駅周辺では、東急・JR東日本・東京メトロによる「100年に一度」とも言われる大規模再開発が進行中です。「渋谷スクランブルスクエア」は、東棟に続く中央棟・西棟の整備が段階的に進められ、歩行者デッキの再編とあわせて回遊性が高まりつつあります。
西口の桜丘地区には「渋谷サクラステージ」が開業し、オフィス・ホテル・商業施設が相次いで稼働。駅西口と丘陵地をつなぐ動線強化も進み、街全体が再構築されています。

渋谷マークシティ

高尾線と競馬場線・動物園線の短距離支線の動向

高尾線【ベスト3】
1位 高尾 23,252人
2位 めじろ台 14,183人
3位 高尾山口 10,690人

高尾線【ワースト3】
1位 京王片倉 5,139人
2位 山田 5,196人
3位 狭間 7,823人

高尾山口

競馬場線・動物園線(短距離支線)
競馬場線:府中競馬正門前 2,442人(全線最少)
動物園線:多摩動物公園 4,006人

高尾は登山や観光の拠点として一年を通じて多くの人が訪れ、特に週末や祝日は高尾山を目指す利用客でにぎわいます。外国人観光客の姿も増えており、自然と都心を結ぶアクセスルートとして存在感を高めています。行楽シーズンには特急や臨時列車の本数を増やし、需要に合わせた運行を行っています。
動物園線は多摩動物園の集客動向に、競馬場線は府中競馬場でのイベント開催により乗降客が変化するという事情を持つ駅になっています。

府中競馬正門前
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