JR東日本の「未来の鉄道戦略」 AI活用や自動運転、ウォークスルー改札など新技術を活用!2027年度までにコスト1000億円削減も

AI(人工知能)とロボットが鉄道の未来を動かすのでしょうか。JR東日本は、運行や保守、駅業務など、さまざまな分野でデジタル技術を活用し、業務の効率化と安全性の両立を進めています。コストを抑えながら安全性を確保することを目的に、AIやロボットを導入できる業務を機械化し、社員が利用者対応や安全確認など、人が担う業務に集中できる体制づくりを進めるとしています。
この取り組みの柱となるのは、運行体制のスリム化や駅業務の効率化、設備点検のスマートメンテナンスです。JR東日本の決算説明資料によると、少子高齢化による人手不足に対応するため、2027年度までにオペレーションコストを2019年度比で1000億円削減する目標を掲げ、鉄道運営の在り方を見直しています。

運行の自動化・省人化(ワンマン・ドライバレス)
ワンマン運転の拡大
運行オペレーションの分野では、ワンマン運転の拡大を主要施策に位置づけています。
2025年3月のダイヤ改正で、常磐線各駅停車の綾瀬〜取手間と南武線の川崎〜立川間にワンマン運転を導入。さらに、2026年春に横浜線・根岸線、2027年春には京浜東北・根岸線や中央・総武線各駅停車などにも拡大する予定です。2030年ごろまでに首都圏の主要線区へ順次広げる方針としています。
自動運転(ドライバレス運転)の導入
また、自動運転(ドライバレス運転)の導入も本格的に進められます。
2029年度には、新潟駅と新潟新幹線車両センター間の回送列車でドライバレス運転を実施し、2030年代半ばには新幹線の営業列車での実現を目指します。さらに、在来線では2028年ごろまでに山手線へのATO(自動列車運転装置)導入を予定しており、2035年ごろまでに在来線ドライバレス運転を実現する構想を掲げています。

保守点検でのAIとDX活用
これまで人の目に頼っていた設備の保守点検も、AIとDX(デジタルトランスフォーメーション)技術で高度化されます。
新幹線トンネルの検査では、AIが画像を解析して「ひび割れ」を自動抽出する技術と、経年変化を比較する「二時期比較技術」を組み合わせ、劣化箇所の検出を自動化。これまで人の目に頼っていた点検を高度化し、安全性と作業効率の両立を図ります。

駅の未来像「Suica Renaissance」
駅のあり方も大きく変わります。「Suica Renaissance」(Suicaルネッサンス)を推進し、今後10年以内に「ウォークスルー改札」や位置情報を活用した改札を実現し、完全なチケットレス・キャッシュレス化を目指します。
これにより、将来的に100億~150億円程度(2024年度比)のオペレーションコスト削減を見込むと同時に、改札機などがなくなった駅スペースを有効活用し、新たな収益につなげる計画も進められるとしています。

さらに今後は、衛星を活用した新たな列車制御システムも導入する方針です。同社は地上設備への依存を減らし、より柔軟で安定した運行を可能にすることを目指すとしています。
JR東日本は、AIやロボット技術を積極的に導入することで、安全性を確保しつつ、鉄道運営全体の構造改革を進めています。機械ができることは機械に任せ、社員は人間にしかできないサービスの提供や新たな価値創造に集中し、コスト削減とサービス向上の両立を目指すという、未来の鉄道の姿が具体的に示された形です。
(画像:JR東日本、PIXTA)
鉄道チャンネル編集部
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