【山形新幹線】福島〜米沢「米沢トンネル」計画の検討会議が始動、JR・国・県で費用分担どうなる?豪雪地帯の難所を克服し安定運行のため

山形新幹線の長年の課題である輸送の安定性と高速化を抜本的に解決するため、福島〜米沢間に計画されている「米沢トンネル(仮称)」の事業化に向けた動きが本格化しています。この長大トンネル計画は、豪雪地帯の難所を回避し、所要時間を約10分短縮する効果が見込まれますが、資材高騰などにより事業費が約2,300億円、工期が約19年に増加しました。山形県は、この巨額の費用負担や整備主体を協議するため「整備スキーム検討会議」を立ち上げ2025年10月29日に第1回会議を開催しました。検討会議には、JR東日本や国土交通省、有識者が加わり、年度内に一定の方向性をまとめる方針です。
米沢トンネル整備計画について
山形新幹線は1992年、東京と山形を結ぶ区間で開業し、1999年には新庄まで延伸されました。現在のルートは奥羽山脈を越える急こう配と豪雪地帯が難所となっていて、速度を落として運行している区間があります。

米沢トンネルは、東京と新庄を結ぶ山形新幹線のうち、豪雪地帯の板谷峠を通過する福島と米沢の区間を大きく迂回し、直線的に結ぶ全長約23キロの長大トンネルです。完成すれば福島―米沢間の所要時間が約10分短縮される見込みで、雪害や強風による運休や遅延も減ると期待されています。フル規格新幹線サイズのトンネルとして整備を目指しており、フル規格新幹線(奥羽新幹線)一部区間として活用可能になるという側面も持ちます。

トンネル化することで見込まれる定性的な効果
山形新幹線は在来線を走行しているため、雨や雪、動物との衝突による運休や遅延が多く、このうち山岳区間を走る福島―米沢間に起因するものが約4割を占めるとされ、安定的な運行の確保は長年の課題とされています。
こうした中、山形県とJR東日本は2022年10月、整備計画の推進に関する覚書を結び、共同で地質調査を行いました。その結果、想定ルートに大きな変更の必要はないことを確認し、事業化に必要な調査は終了しています。

トンネルが完成すれば、東京と山形を結ぶ所要時間が短くなるだけでなく、冬季の安定運行や観光振興、地域経済の活性化にもつながるとみられています。
整備にかかる費用負担などを巡り協議
昨年度、JR東日本が再試算したところ、事業費は当初の約1500億円から約2300億円と約800億円増え、工期も着工から約15年とされていた見込みが約19年に4年延びると報告されています。資材価格や労務費の上昇が影響したとみられています。
政府は6月に示した「骨太の方針2025」で幹線鉄道の高機能化を推進する方針を打ち出していて、このトンネル事業の後押しになると期待されています。 一方、巨額の事業費を国や県、JRのどこがどの程度負担するのか、整備主体をどこに置くのかが課題で、検討会議では予算措置や税制優遇、制度づくりも含めて年度内に一定の結論をまとめるとしています。
JR東日本は「輸送の安定性と所要時間短縮に効果がある」と評価する一方で、負担割合や着工時期については現時点で明言を避け、国や県との協議を注視していく考えです。
山形新幹線の喫緊の課題である安定運行と高速化の鍵を握る「米沢トンネル」計画は、巨額な費用負担という大きな壁に直面しています。しかし、このトンネルが実現すれば、豪雪地帯の難所を克服し、東京〜山形間の心理的距離を短縮し、地域経済の活性化にも繋がるとされています。検討会議の年度内の結論に注目し、山形の未来を拓く「希望のトンネル」の実現に関して見守りましょう。
(画像:PIXTA、山形県)
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