東京メトロ有楽町線(8号線)の豊洲駅から住吉駅までの延伸にともない新設される「(仮称)千石駅」周辺で、新たなまちづくりの動きが始まります。東京メトロは、Bean to Barチョコレートで知られるダンデライオン・チョコレート・ジャパンと1億円の資本業務提携を締結。千石エリアへの新店舗進出と魅力的な地域創出を目指します。新駅開業前から鉄道事業者が主導して「街のカルチャー」を育む取り組みは、従来の沿線開発を超えた新しい都市づくりのモデルとして注目の変化をもたらしそうです。

有楽町線延伸計画の概要と(仮称)千石駅の予定地

2021年に営業運転を開始したメトロ有楽町線・副都心線17000系(画像:鉄道チャンネル)

東京メトロ有楽町線(地下鉄8号線)の延伸事業は、豊洲駅から東陽町駅を経由して住吉駅に至る約5キロの区間を整備する大規模プロジェクトです。延伸工事は2024年11月に着工しました。この新路線が完成すると、住吉駅から豊洲駅までの所要時間は、現在の乗り換え2回・約20分から、乗り換えなしの約9分に短縮される見込みです。都区部東部と臨海部のアクセス向上や、周辺路線の混雑緩和が期待されています。

東京メトロ有楽町線延伸計画による新駅設置予定地と千石エリアに出店予定の「ダンデライオン・チョコレート」ファクトリー&カフェの位置

この延伸区間に新設されるのが「(仮称)千石駅」「(仮称)枝川駅」、2つの中間駅です。「(仮称)千石駅」は江東区千石二丁目付近、四ツ目通りの地下に建設が予定されています。
東京都現代美術館に近く、周辺は住宅や地域密着の店舗が立ち並ぶエリアですが、既存の東陽町駅や住吉駅からは距離があり、鉄道アクセス面での課題がありました。2030年代半ばの開業を目指して工事が進むなか、江東区や東京メトロを中心としたまちづくり構想が始動しており、新駅開業に先駆けた地域の活性化策に熱い視線が注がれています。

【参考】東京メトロの2つの新線プロジェクト 有楽町線と南北線の延伸計画が一歩前進【コラム】(※2023年7月掲載) https://tetsudo-ch.com/12899399.html

東京メトロと1億円の資本業務提携! 千石に新拠点

東京メトロ×ダンデライオン・チョコレート・ジャパンが1億円の資本業務提携を締結

2026年7月31日、東京メトロとダンデライオン・チョコレート・ジャパンは、千石エリアのまちづくり推進と地域のにぎわい創出を目的として、1億円の資本業務提携を締結したことを発表しました。

ダンデライオン・チョコレートのファクトリー&カフェ内観
「ダンデライオン・チョコレート」ファクトリー&カフェ サンフランシスコ

ダンデライオン・チョコレートは、2010年に米サンフランシスコで創業した「Bean to Bar」のチョコレート専門店です。カカオ豆の仕入れから選別、焙煎、摩砕、成形、包装までを一貫して手掛けています。日本では2016年2月、東京・蔵前に日本1号店となる「ファクトリー&カフェ蔵前」を開業しました。シングルオリジンのカカオ豆とオーガニックのきび糖を使い、産地ごとに異なるカカオの香りや味わいを生かしたチョコレートを製造。クラフトマンシップ溢れる店舗づくりで人気を集めてきました。同店が進出して以降、蔵前エリアにはリノベーション店舗やクリエイターが集まり、「ものづくりのまち」としての魅力を高める大きな原動力となりました。

今回の提携にともない、ダンデライオン・チョコレートは(仮称)千石エリアに新たなファクトリー&カフェを出店することを決定。蔵前で培った地域連携の知見を活かし、東京メトロとともに人々が集い交流する新たな拠点を創出していきます。

「駅ができる前」から仕掛ける新時代の沿線開発

東京地下鉄 代表取締役社長 小坂彰洋氏(写真左)とダンデライオン・チョコレート・ジャパン 代表取締役CEO 堀淵清治氏

従来の鉄道事業者による沿線開発といえば、新駅や高架下の開業にあわせて商業施設をオープンさせるハード面主導のスタイルが一般的でした。しかし今回の東京メトロの取り組みは、駅の開業に先駆けて「街の文化や人の流れ」を醸成するという、ソフト主導のアプローチです。

ダンデライオン・チョコレートの日本1号店「ファクトリー&カフェ蔵前」

蔵前を「クラフトの街」へと変貌させた実績を持つダンデライオン・チョコレートをパートナーに選んだ点は極めて象徴的。ブルーボトルコーヒー清澄白河店や蔵前店の立ち上げを手掛けた堀淵清治氏の知見が加わることで、(仮称)千石駅周辺は単なる通過点ではなく「わざわざ訪れたくなる魅力的な街」としての地力を蓄えることになります。

ハード(新駅)が完成した時にはすでに魅力的なカルチャーが根付いている——。この新しいまちづくりの手法は、今後の鉄道沿線開発における新たな成功モデルとなるのではないでしょうか。

新駅の完成を待つだけでなく、開業前から地域の魅力を育んでいく東京メトロとダンデライオン・チョコレートの挑戦。(仮称)千石駅周辺がどのような新しい表情を見せてくれるのか、今から開業が待ち遠しくなりますね。カカオの香る素敵なまちへ、進捗を楽しみに見守りつつ、完成の暁にはぜひ足を運んでみてください。

画像:Dandelion Chocolate Japan

鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

【関連リンク】