運休が続くJR美祢線沿線で「山口デスティネーションキャンペーン(山口DC)」に合わせて新たな観光企画がスタートします。なかでも注目は、10月3日(土)~12月27日(日)の土日祝日限定で運行する次世代観光モビリティ「e-Palette(イーパレット)」を活用した日帰りツアー「美祢ぐるっと号」
別府弁天池秋芳洞大嶺酒造といった美祢エリアの絶景や人気スポットを効率よく快適に周遊。「免許がないから」とマイカーなしでの観光を諦めていた人や「車の運転を気にせず日本酒の飲み比べを楽しみたい」という旅行者に嬉しい選択肢となります。大きな窓の未来感あふれるEV車両は走行音が静かで車酔いしにくく、車窓からのパノラマビューを満喫しながら非日常の移動を体験できます。
本記事では、新幹線停車駅からの代行バスを利用した美祢駅までのアクセス方法から「e-Palette」の乗り心地、各立ち寄りスポットの見どころまで「美祢ぐるっと号」をいち早く体験した様子を詳しくレポートします。

【参考】【山口DC】運休中の美祢線を走る非日常体験とは? 長門湯本駅発のレールアクティビティ「Rail Run!」料金・予約方法とレールサイクル体験記 https://tetsudo-ch.com/13038367.html

美祢線代行バスで厚狭駅から美祢駅へ

厚狭駅改札。ここから乗車するのは代行バスですが、乗車方法は電車と同じ。券売機で切符を購入して自動改札機を通ります

「美祢ぐるっと号」は「美祢グランドホテル」「美祢市役所」「JR美祢駅」「道の駅おふく」の各地からスタートします。遠方から参加する人はJR美祢駅からの乗車が便利でしょう。

大雨で被災する前の美祢線美祢駅の様子(画像:Pixta)

JR美祢(みね)線は2023年の大雨被害により厚狭川が増水。川に架かる橋梁の流失など全線で80ヶ所が被災し、運休が続いています。利用者の低迷や復旧費用・維持費の負担などを理由とし、2025年8月にはBRT(バス高速輸送システム)へ転換することが決定。JR美祢線は事実上の廃止が決まっています。

山陽新幹線停車駅の厚狭駅

運休している美祢線に代わり、現在は山陽新幹線こだま停車駅の厚狭(あさ)駅から代行バスを運行しています。

美祢線代行バス停車駅(画像:JR西日本)※道の駅「センザキッチン」まで延伸する快速便は、山口 DC 快速として2026年10月3日~12月27日の土休日に3 往復運行

JR美祢駅は「厚狭駅」から美祢線代行バスで向かいましょう。

美祢線代行バス 快速長門市行き(厚狭駅)

厚狭駅から美祢線代行バスに乗り、30分少々で美祢駅に到着します。

運休中の美祢線「美祢駅」に停車する「e-Palette」

美祢駅からはいよいよ、次世代観光モビリティ「e-Palette」に乗車します!

「e-Palette」はどんな乗り物?

「美祢ぐるっと号」として運行する次世代モビリティ「e-Palette」。未来感のあるたたずまいが道行く人々の注目を集めていました

「e-Palette」は、トヨタ自動車が開発した自動運転機能などを備える次世代のEVモビリティです。

【参考】地方ローカル線の観光アクセス問題は次世代モビリティが解決する? 山口DCで運行「e-Palette」秋芳洞日帰り周遊ツアーの魅力を解説(9/1発売)(※2026年8月掲載) https://tetsudo-ch.com/13036910.html

大きな窓からパノラマビューを満喫しながら観光スポットを巡ることができます

「e-Palette」の特徴のひとつが、大きな窓。「Mine秋吉台ユネスコ世界ジオパーク」をはじめとする絶景スポットを楽しみながら移動できます。

電気スロープも備えているため、車いすにも対応できます

「e-Palette」は低床で大開口ドア。ユニバーサルデザインを採用しているため、幅広い人が快適に利用できます。

車内のモニターで見どころを紹介

車内にはモニターを設置。ガイドは乗車しませんが、これから向かう観光地を紹介する映像が流れ、見どころや注意点を事前にチェックできます。

ハンドルの形状が特徴的。航空機の操縦桿のようなステアリングホイールを採用しています

ドライバーは乗車しますが、電気信号のやり取りだけでタイヤの向きを変える次世代の操舵システム「ステアバイワイヤシステム」を搭載しているため、ハンドルの持ち替えが不要です。
実際に乗車してみて感じたのが「車酔いしやすい人も安心して乗れそうだな」ということ。車特有のにおいがせず、走行音は静か。EV特有の乗り心地に加えて大きな窓から景色も楽しめて、とても快適でした。

別府弁天池

エメラルドブルーの水が池の底から絶え間なく湧き出ている「別府弁天池」。石灰岩の層を通ってろ過された透明度の高い地下水ですが、なぜエメラルドブルーなのかは未だ解明されていないのだとか

ここからは、「美祢ぐるっと号」で巡る観光スポットを紹介していきましょう。最初に訪れるのが、別府厳島神社の境内にある「別府弁天池(べっぷべんてんいけ)」。日本名水百選に選定されている湧水池で、摂氏14度の透明度の高い水が陽光を反射し、神秘的なエメラルドブルーに輝きます。

淡水性のベニマダラは環境省の純絶滅危惧種に指定されています

一部赤色の石が見えますが、これは「ベニマダラ」と呼ばれる藻類の一種が石の表面で生長したもの。清流の日陰など限られた場所でしか生育できないそうです。

由緒ある「別府厳島神社」御社殿。毎年9月に行われる別府弁天まつりでは、「別府念仏踊り」が奉納されます

別府弁天池の奥には、別府厳島神社がありました。弁財天社として806~810年頃に創建。1871年に広島県の厳島神社から三柱の水神の分霊を受け、「弁才天社」から「別府厳島神社」に改称されました。

弁財天にお供えされているワンカップをよく見ると、この後訪れた大嶺酒造のものでした!

池の周囲にはたくさんの巨木が育っていて、ご神木には注連縄が巻かれています。中でも注目は、樹齢約450年の杉の木。ウロの中に小さな弁財天が祀られていました。

秋芳洞・秋吉台

秋吉台観光交流センターに到着

続いて向かったのは、日本最大級のカルスト台地「秋吉台」と、その地下100メートルに位置する大鍾乳洞「秋芳洞」

飲食店や土産物の店が並ぶ「秋芳洞商店街」。山口県を代表する伝統工芸品「萩焼」の店もあり、後ろ髪を引かれつつ秋芳洞へ向かいました

秋芳洞の入り口は、秋吉台観光交流センター近くの「秋芳洞正面入口」、反対側の「黒谷口」、中間に位置する「エレベーター入口」の3ヶ所。今回は「秋芳洞正面入口」から入りました。

秋芳洞正面入り口。内部の温度は1年を通して17度程度で涼しく感じました

巨大な岩の裂け目に入っていくという、ドラマティックなシチュエーションにワクワク! 冒険が始まりそうな雰囲気があります。

「冒険コース」を体験した人からは「ガチなコース」という声も

なんて思っていたら、プラス300円で利用できる「冒険コース」がありました。スタート地点で岩に直接打ち付けたはしごを登ってスタートする時点で、何やら本格的な予感。鍾乳石の間をくぐりながら進むコースだそうで、いつか冒険してみたいですね。

まるで棚田のような地形が目を引く「百枚皿」

秋芳洞を代表するスポットがこちら「百枚皿」。地下水に含まれる石灰分がゆるやかに溜まり、お皿の形になります。その数は100枚……ではなく、大小合わせて500枚以上に及ぶそうです。

秋芳洞の鍾乳石の中でも最大級の大きさを誇る「黄金柱」

高さ約15メートル、太さ約4メートルの「黄金柱」。何万年もの時をかけて地下水が石灰分を沈積させてつくりあげた、巨大な鍾乳石です。

地下80メートルからエレベーターで地上へ

鍾乳洞のほぼ中央にエレベーター口があり、あっという間に地上へ。石灰岩が雨水や地下水に浸食されてできたカルスト台地として有名な「秋吉台」へ出ることができます。

カルスト展望台横の「Mine秋吉台ジオパークセンター Karstar」

「Mine秋吉台ジオパーク」(美祢市全域)は貴重な地質地形遺産などが評価され、2026年4月「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されました。その観光拠点「Mine秋吉台ジオパークセンター Karstar(カルスター)」は、観光案内カウンターや休憩スペース、カフェも併設。ジオパークに関する情報を学べるスポットです。

Karstar内には、石灰岩や無煙炭、銅を取り出すことができるくじゃく石などの展示もありました

Mine秋吉台ジオパークは、石灰岩の「白」、無煙炭の「黒」、銅の「赤」をテーマカラーとしています。石灰岩が水に溶けることでつくり出されたのが「秋芳洞」をはじめとする地下の鍾乳洞です。なんと、大小合わせて約450の鍾乳洞があるのだとか!

「秋吉台展望台」は2027年3月26日まで改修工事を実施中

Karstarに隣接する「秋吉台展望台」からはカルスト台地を一望できますが、改修工事のため、山口DC期間中は残念ながら利用できません。

草原の緑と白い石灰石のコントラストが美しい、360度の大パノラマを堪能しましょう

見渡す限りの草原に白い石灰岩が顔を出す圧巻の風景が広がっていました。トレッキングに最適なのはもちろん、電動アシスト付き自転車やトゥクトゥクをレンタルして駆け抜けることもできます。

大嶺酒造

田園風景の中に、黒と白を基調としたミニマルでモダンなデザインの建物が際立っていました

続いて向かったのは、歴史ある酒造を半世紀以上の時を経て復活させた「大嶺(おおみね)酒造」。日本酒ブランド「Ohmine」は発売以来、世界から注目されています。

「別府弁天池」の湧き水を仕込み水とした醸造タンクが並んでいます

店内からはガラス越しに、酒造りの様子を眺めることができます。

代表銘柄「Ohmine」シリーズのボトルがおしゃれ! お酒が飲めなくても購入したくなりそうな、ハイセンスなグッズが充実しています

お米をモチーフにしたモダンでスタイリッシュなデザインは、ボトルだけでなく、さまざまなグッズになっています。

店内の飲食スペース。外にはテラス席もありました。日本酒の飲み比べはもちろん、仕込み水でドリップしたコーヒーなどのノンアルコールドリンク、酒粕を使ったチーズケーキなどフードも楽しめます

車以外でのアクセスが難しい立地ですし、運転してしまうと店内のカフェで飲酒ができませんから「e-Palette」で立ち寄れるのはありがたいですね!

道の駅おふく

JR於福駅から徒歩約3分の立地。JR美祢線代行バスでアクセスできます

最後に立ち寄ったのは「道の駅おふく」。特産品の販売はもちろん、全浴槽源泉かけ流しの温泉施設「於福温泉」を併設。美祢市の素材を使用した手作りの「秋吉台ジェラート」も人気のスポットです。

秋芳梨を使った商品を発見!「e-Palette」で秋芳梨選果場の前を通りましたが、いつもすぐ売り切れてしまうほど人気があるそう

美祢市の特産「美東ごぼう」を使ったポテトチップスや、於福で長く愛された味を復活させた「おふくまんじゅう」、秋吉台の麓で生産されている「秋芳梨(しゅうほうなし)」を使ったお菓子など、魅力的な商品がずらりと並んでいました。

秋芳梨コーナーの横にはガードレールガチャガチャが。山口県の特産品「夏みかん」にちなんだオレンジがかった黄色のガードレールを「e-Palette」の車窓から眺めたばかりだったので「おぉっ!」となりました

鉄道から新たな交通インフラへと生まれ変わろうとしている美祢線沿線。その過渡期である今しか見られない駅の風景と、次世代モビリティがもたらす新しい旅の形は、きっと忘れられない体験になるはずです。「美祢ぐるっと号」は山口DC期間中の週末限定の運行となります。この秋はぜひ、新幹線と代行バスを乗り継いで、未来感あふれる美祢の新しい周遊旅を体験してみてはいかがでしょうか。
次回は、同じく美祢線代行バスでアクセスできる、長門湯本温泉の見どころを紹介します。お楽しみに!

文・写真:斎藤若菜

(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)