ピィーン、キリキリキリキリ、プシューッ、キリキリキリキリ………。

開業から56年、ついに20メートル級の大柄な車両が走り始めた地下鉄日比谷線。これまで18メートル級の営団3000系や東武2000系、東京メトロ03系、東武2000系などが走ってきた線路に、新たにメトロ13000系、東武70000系が走り始めた。

曲線の多い日比谷線のホームに7両編成の20メートル車両が入線すると、「さすがに大きいな」と感じる。曲線の途中にあるホームでは、連結部分はホームから大きく離れ、パンタグラフは低く折れ曲がる。車両のルーフと架線との距離も近く、車両限界ぎりぎりを列車が走り抜けるというイメージ。

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最近、日比谷線の20メートル7両編成に乗っていると、「あれ?」と思うことがある。キリキリキリキリ……という床下からのブレーキ音が、意外と気になる。

1964年の東京オリンピック開催にあわせ、急ピッチでつくった日比谷線は、既存の道路の直下を開削工法でトンネルを掘り、線路を敷いていった。そのため、中目黒と人形町の間は、交差点の直下を直角に曲がるような急カーブが連続する。

外苑西通りと六本木通りの西麻布交差点、六本木通りと外苑東通りの六本木交差点、飯倉交差点、桜田門交差点、築地四丁目交差点、甘酒横丁交差点……と、地上のクルマと同じように列車が曲がっていく。

ひと駅間でも、運転士はノッチのオンオフ切り替えを余儀なくされ、客室でも床下から加速・減速が細かく伝わってくる。力行でVVVFの音が響き始めたかと思うと、すぐにブレーキ。次の駅のホームの灯りが見えてきたころ、惰性でホームに進入するかと思いきや、残り200mを残した直線で新CS-ATCが「60km/hまで加速を」とうながしてくる。運転士も電車もたいへんだ。

この13000系電車には、曲線走行時のレールと車輪がこすれる騒音を低減する操舵台車がついていて、レールと車輪のきしみ音は消えた代わりに、こんどはブレーキが鳴く音が目立ってきた。

どちらも、限界ギリギリの軌道空間と急カーブが続く日比谷線らしい、ジャムセッション。いつもの足音と、新種のブレーキ音の、二重奏が聞こえてきた。