白鳥渡る 青函特急最後の1日(2016.3.21)

2016.04.15

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3月21日15時46分。函館駅の頭端式ホームに、札幌から満員の乗客を乗せて来た「スーパー北斗」が到着した。同じホームの向かい側には、萌黄色の「スーパー白鳥」。函館駅では、札幌方面と青森方面の列車が同じホームに向かい合わせに止まり、乗り継ぎしやすいようになっている。青函連絡船の時代から、函館駅は北海道内と本州方面との結節点であり続けたが、この日を最後にその役割を終える。

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3月26日の北海道新幹線開業に向けて、22日から4日間、津軽海峡線は旅客列車が運休になる。そのため、21日は津軽海峡を定期運行の在来線列車が渡る最後の日になった。函館と新青森の間を結んだ特急「スーパー白鳥」と「白鳥」もこの日で運行を終える。日が傾きかけた函館の空の下で、ホームに列車が入り、人々が行き交う。大きな荷物を持った人、旅行帰りらしい親子連れ、カメラを構える人、足早に列車へ急ぐ人。そして列車は出発し、するすると加速してホームを離れていく。その様子は、カメラマンがいつもより多いこと以外、日常の光景そのものだった。

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「スーパー白鳥」はJR北海道が所有する789系電車で運行し、2002年の東北新幹線八戸延伸とともに登場した。

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「白鳥」はJR東日本が所有する485系電車で運行。青函トンネル開業時から海峡線を走り続けてきた国鉄型車両で、内外装ともリニューアル済みで現代的な雰囲気だが、細部に年季を感じる。

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17時05分。6番線に青森方面から「白鳥17号」が到着した。函館に入る同型車両としては最後の列車である。奥側の8番線にいる「スーパー白鳥38号」は発車間際。乗車口でドアを挟んで立つカップルの姿が見え、なぜかこっちが切なくなる。遠距離恋愛も支えた青函特急。この後、ラストランの列車では車掌が「夢と希望を乗せて走り続け、数々のドラマを演出した」とも語っていた。役目を引き継ぐ新幹線が、2人の距離を近くすることを願う。

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木古内へ
函館から青森方面へは、18時21分発の「白鳥96号」、19時32分発の「スーパー白鳥98号」がそれぞれ最後の列車になる。当日、僅かに空席が出たので、函館の次の木古内まで「白鳥96号」で、次に青森まで「スーパー白鳥98号」に乗っていくことにした。

日没をすぎた函館駅を、「白鳥96号」はほぼ時間通りに発車した。華々しいセレモニーこそなかったが、ホームは最後の姿を見ようと見送りに訪れた人や、「白鳥」に乗り込む人、向かい側に到着した「北斗」を降りた人などでごった返していた。ファンのみならず、通りすがりの旅行客もスマホのカメラをこちら側に向けていた。

車窓から見える灯りがゆっくりと流れる。車内の電光掲示板には、22日から津軽海峡線が運休する旨の告知が流れていた。青森へ帰る車内は誰もが無口で、静かで、時折聞こえる物音や咳払いのほかは「白鳥」の走行音だけが響いていた。

 

木古内駅
木古内駅で列車を降り、最後の「白鳥」を見送った。駅員さんのアナウンスにも情がこもる。

 「木古内、木古内です。今日はJR北海道、ならびに特別急行白鳥をご利用くださいまして誠に、誠にありがとうございました。まもなく、最後の白鳥96号が発車いたします。」

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駅には「白鳥・スーパー白鳥 ありがとう」「ラストラン、さようなら」と書かれた横断幕やポスターが随所に並び、改札口上の発車標にも「さようならスーパー白鳥」の文字が表示されていた。

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木古内駅は、26日に開業する北海道新幹線の停車駅でもある。小さな町なので夜の駅前は閑散としているが、新幹線開業を前に駅前には「道の駅 みそぎの郷 きこない」がオープンし、観光の拠点として動き出していた。道南の食材にこだわったレストランも併設されている。本当はゆっくりしたかったが、今回は時間が限られていた。早く食べられる料理はどれか聞き、10分ほどでできるという「道南のウニとタラコのスパゲッティーニ」を注文した。とても美味しい。ウニもたっぷり乗っているから、皿にたまったスープとウニはスプーンで掬い、余すことなくいただいた。

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木古内駅に戻る。ホームには、最後の上り「スーパー白鳥」の到着を前に、駅員のアナウンスが繰り返し流れていた。写真撮影ではフラッシュを使わないこと、黄色い線の内側で待つことなどの注意喚起のほかに、こんなアナウンスも。

 「まもなく1番線には20時11分発、本日最後の列車となります、また津軽海峡線・新青森方面に走ってまいります列車としては最後の列車となります、特急スーパー白鳥98号が入ってまいります。

 2002年にデビューいたしました、このスーパー白鳥も、14年の歴史を経て北海道新幹線に、本日をもちましてバトンタッチという形で引退となります。長い間、ご利用、またご愛顧いただきまして、皆様には感謝を申し上げます。

 新青森、蟹田、青森等、目的地まで、最後の短い間ではございますが、どうぞ、ごゆっくりとお過ごしいただきますようお願い申し上げます。また、本日でスーパー白鳥の名前、白鳥の名前の特急列車はなくなりますが、皆様の心の中にどうぞとどめていただければと、心より思っております。

 14年間、スーパー白鳥号、また白鳥号を、津軽海峡線を、ご利用頂きまして、誠に、ありがとうございました。」

「1番線はご注意ください。1番線はご注意ください。津軽海峡線、本日最後の、また歴史上最後の在来線特急となります、スーパー白鳥98号新青森行きが、函館方面より8両編成で入ってまいります。ご利用のお客様、危険ですので黄色い線の内側まで下がってお待ちください。14年という長い間、ご苦労様でした。またご利用のお客様、最後までその姿を目に焼き付けてご乗車いただけますと、幸いでございます。本日もJR北海道をご利用いただきまして、ありがとうございました。次の停車駅は、蟹田です。」

 

最後の「スーパー白鳥」
最後の「スーパー白鳥」が木古内を発車し、いよいよ青函トンネルを渡る。「スーパー白鳥」では、自動アナウンスと電光掲示板で青函トンネルに関する案内が流れる。青函トンネルの前後は地上のトンネルも多いため「これが青函トンネルかな」と思っても不意打ちだったということも多かったが、「スーパー白鳥」では列車がいまどのトンネルを走っているのかも表示され、わかりやすい。青函トンネルが近づくと「次が青函トンネル」、そして「青函トンネルに入りました!!  青函トンネルに入りました!!」とハイテンション気味に案内してくれる。この演出、新幹線でも引き継いでほしいと密かに願っている。

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各座席のテーブルには、青函トンネルの通過予定時刻が掲示されている。20時19分、最後の「スーパー白鳥98号」も時間通りにトンネルに入った。

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トンネル最深部を過ぎた頃に、車掌によるアナウンスが入った。

 「青函トンネルを抜けてすぐ右手で、JR北海道社員が、皆様をお送りさせていただいております。皆様も手を振っていただければ、幸いに思います。」

あいにく自分の席は左側だったのでデッキまで行き、右の窓から外の様子をうかがっていた。そしてトンネルを抜けてすぐ、暗闇の中に、カラフルなペンライトのようなものが揺れる様子が見えた。全力で手を振り返す。外から見えただろうか。

蟹田駅の手前では、自動アナウンスに続いて、車掌から最後の挨拶があった。

 「まもなく蟹田に止まります。降り口左側、1番線の到着です。ご乗車いただきましてありがとうございました。お降りの際にはお忘れ物ございませんようお支度の上お待ちください。次の蟹田で乗務員交代をさせていただきます。蟹田から先は、JR東日本の乗務員がご案内させていただきます。引き続きよろしくお願いいたします。

 本日は特急スーパー白鳥98号のラストランでございました。JR北海道として、いつもより少しだけ長く放送させてください。

 昭和63年3月13日に開業した青函トンネル、津軽海峡線は、これまで快速海峡号、急行はまなす号、急行はつかり号、白鳥号、スーパー白鳥号、寝台特急北斗星号、カシオペア号、トワイライトエクスプレス号、日本海号、様々な列車が皆様の夢と希望をのせて走り続けてまいりました。

 その中で、スーパー白鳥号は平成14年12月、東北新幹線八戸開業を機に、お客様を八戸までお迎えするという使命のもと運転を開始した列車です。お客様にも社員にも親しまれ、そして数々のドラマを演出してまいりましたが、3月26日の北海道新幹線開業に伴い、その役目を終えようとしております。

 スーパー白鳥号と白鳥号、JR北海道社員を代表してお礼を申し上げます。皆様、これまで、スーパー白鳥号、白鳥号を愛し、ラストランにご乗車くださいまして誠にありがとうございました。今後ともJR北海道、北海道新幹線をよろしくお願いいたします。特急スーパー白鳥98号の思い出を車内にお忘れになりませんようにお気をつけてお降りください。ご乗車いただきましてありがとうございました。

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—— All photos and texts by Akihiro Maeda


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