11月21日、新潟県柏崎市青海川。

青春18きっぷシーズン前の平日とあって、青海川駅に立つ人は、この中年だけ。

オンショアの冷たい風が、信越線の線路から、赤い米山大橋(国道8号 北陸道)へ向けて吹き抜ける。

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そんな凍えそうなホーム上と対照的に、ホーム脇で日本海へ注ぐ谷根川(たんねがわ)は熱かった。泣けた。泣いた。

川面のすぐ下に、不気味なほどに群れをなす、傷だらけの鮭たち。

いたるところで、川の流れとは別の、ピシャッっという水しぶき。

新潟県柏崎市の冬の風物詩、谷根川へ鮭の遡上

人ひとりいないなか、母川回帰のダイナミズムと対峙。

日本海へと注ぐ谷根川の流れに逆らい、からだをぶつけ合いながら、傷めながら前へ前へ……。

ウン十年前に遭遇した、村上の鮭の遡上とはまた違う、目の前で展開するDNAインパクト。

魂まで奪われそうなその衝撃にポカーンとしながら駅へ戻ると……。

こんどは鮭が妙な切り身で吊るされてた

これなに?

「切り身にして干して保存する」と。

「この地域の保存食。焼いて、煮て、ほぐしてとか」

青海川駅の海側ホームで長岡駅方面電車を待っていると、使われていないトンネルが遠くに見える。

そのトンネルに続く小道、谷根川を渡る歩道橋。

ぜんぶ、信越線の旧線。この道の上に、線路が敷かれていたと……。

誰もいない信越線 青海川駅の平日。仕事忘れて、心奪われて、サウダージ。いや、サウージ!