東芝は、鉄道車両監視向け振動発電モジュールを開発。環境振動を利用し発電する振動発電で、これまでの発電量を従来の2倍に高めた。

環境振動とは、人間の生活振動、工場配管などの産業機器の振動、鉄道や電車などの交通機器の振動などをいう。

同社は今回、新たに整流変圧回路を備えた振動発電モジュールを開発。発電電力を従来の4.0mWから2倍の8.9mWに高められることを確認。

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開発した振動発電モジュールは、振動発電機の発電密度を高めた同社独自構造の振動発電機と、振動発電機に対する回路の等価抵抗を任意に調整できる整流変圧回路を装備。

これにより、振動発電機から効率的に電力を取り出すことができる最大電力動作点での発電条件に調整が可能に。

同社は、この鉄道車両監視向け振動発電モジュールで、鉄道車両走行時の台車振動実測データにもとづく走行模擬振動試験を実施。振動発電モジュールの発電電力を2倍にできることを実環境振動下において確認した。

環境振動を利用し発電する振動発電は、各種監視システムなどのIoTセンサーネットワークの自立電源として期待されている。

開発背景

鉄道車両の脱線などの重大事故を防ぐために、鉄道車両台車向けの状態監視システムの開発が進んでいるなか、台車の状態を監視するための台車周辺に設置する各種センサーのために電源ケーブルを車両から後付で台車に敷設するのは難しかった。

また、監視システムの高度化により、信号処理や無線データ伝送等に要する全ての電力を振動発電などでまかなうことは、現状の技術では不十分だった。

このため、監視システムの省電力化と並行して、振動発電の大電力化に関する技術開発が求められていた。

環境振動を利用した発電量を最大化するためには、振動発電機の発電密度(体積発電電力密度)を高める技術と、振動発電機から効率良く電力を取り出す技術が要る。

同社は、これまでに磁石配置を工夫して発電密度を高めた独自構造の電磁誘導型振動発電機を開発。

鉄道総合技術研究所の鉄道車両試験線で、実車走行フィールド試験を行い、有効に発電できることを立証した。

同社は今後、設計の適正化や環境耐久性などの改善を図り、鉄道車両台車向けへの適用を視野に入れ、さらに研究開発をすすめる構え。

開発技術の詳細については、9月5日から開催される2018年度精密工学会秋季大会講演会で発表する。

また、鉄道総合技術研究所で9月6日から開催される2018年度技術フォーラムで試作機を展示する。