押井守、科学とアニメと最近の想い「なにがあったら楽しいか」「ひとつだけ哲学を」「気づいたらスマホしかない」

2018.06.20

「機動警察パトレイバー」「攻殻機動隊」などを手がけてきた映画監督 押井守は、2018FIFAワールドカップ ロシアが始まったいま、どう思っているか―――。

押井は6月7日、東京・渋谷で行われたICL(国際リニアコライダー)活動報告会に登壇。日本のクリエーティブについて「妄想が大事」と持論を展開した。

「攻殻機動隊やってたときには、インターネットなんて知らなかった。そこには妄想が大事なわけ。いまの時代に足らないものは、『なにがあったら楽しいか』をかたちにすること。かたちにするとみんな納得する」

「世界中の科学者が、千人単位でつくるんだっていうのが大事。オリンピックは2週間、ワールドカップも2週間。どっちに金を使ったほうがいいのかと」

ILC(国際リニアコライダー:International Linear Collider)計画は、全長約20kmの直線状の加速器をつくり、現在達成しうる最高エネルギーで電子と陽電子の衝突実験を行う計画。

宇宙初期に迫る、高エネルギーの反応をつくり出すことによって、宇宙創成の謎、時間と空間の謎、質量の謎に迫るというプロジェクト。このプロジェクトに重ねて、押井はこう語っていった。

「ぼくは学生時代、物理は赤点、数学はサイン・コサイン・タンジェントであきらめたけど、このILCは科学というより文化。日本人がILCを文化としてとらえられるか」

でかいものを残さないとダメなんだ

「現代の日本人が、目に見えない現象に、時間と金をかけることにどう向き合うか。価値観をどうとらえるのか。これが最大の問題」

「子どものころ夢見た科学の世界は、だいぶ違っちゃった。科学はすばらしいものだった。でも10年、20年前に想像したものが、いま実現していない」

「そう思うと、ぼくはILCの完成をみてから死にたい。いま何ができるか。多少なりともいいほうに転がっていればいい」

「ぼくの世代の映画監督やアニメ監督がほとんど死んでいる。ぼくもうかうかしてられない。次は誰だってとこまできている。そういう世代だからこそ、世の中のためになる科学に期待したい」

「科学がワクワクしていた時代を再現したい。それには物を見せるしかない。巨大な施設が、原子レベルの小さなもののために稼働しているということを、いかにすばらしいかを伝えたい」

気づいたらスマホしかなかった

「アニメ業界はいま人手不足。これまで、高カロリーなものばかりをつくってきた。とにかく商品をいっぱいつくってくれっていわれたこともある。その当時、つくってるなかで基本的に、子どもや夢のあるものをつくれといわれた」

「アニメを見てるときだけは夢の時間だから、ひとつだけいいこと言えっていわれた。ふたつもみっつもいらないと。ひとつだけ哲学を入れろといわれた。その哲学が、ひとつでも入っていれば作品といえる」

「サッカーと同じ。これほど騒がないサッカーW杯はない。でかいものを残さないとダメなんだ」

「いま、でかくて残せるものが、ないんだよ。ほんとに。もう日本という国に愛想を尽つきかけているけど、ILCができたら、少しは役に立ったかなといえるものがほしい」

「自分が生きた時代ってなんだったんだろうって。スタートはよかった。未来はどんどんいまよりよくなると思ってた。その唯一の方策が科学だった」

「でもいま、気づいたらスマホしかなかった。これって『自分の人生ってなんだったんだ』って思っちゃうわけ」

「ぼくらは漠然と思ってることを作品にすることが仕事。物語や言葉にすることがぼくたちの仕事なわけ。苦手な科学にかかわっている。だからこそ科学への妄想が激しかったから」

―――まだまだ語ってほしいことがいろいろある。押井の「時間が足りない」ということばも、印象的だった。

こちらの記事もオススメです