東洋のガラパゴス。人口2474人、天然記念物の「イリオモテヤマネコ」が生息する西表島(沖縄県八重山郡竹富町)。

ここ西表島に、わずか100頭ほどが生息する絶滅危惧種 イリオモテヤマネコ が、ある大きな流れに巻き込まれて、その数を減らしはじめているという。

それは―――オーバーツーリズム。島の人口2474人に対し、最近は1年間に30万人を超える観光客が西表島に訪れるとあって、ピーク時のオーバーツーリズムが波及し、植生・生態系へ重大なダメージを与えているほか、イリオモテヤマネコの交通事故も増えている。

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こうした状況に危機感を覚え、動き始めたのが、アメリカオレゴン州ポートランド発のアウトドア・フットウェアブランド「KEEN」。

その日本法人キーン・ジャパン合同会社は、西表島を「知ろう」「守ろう」「話そう」「残そう」という4つの想いを込めたプロジェクト『Us 4 IRIOMOTE』(アス・フォー・イリオモテ https://www.us4iriomote.org/)を立ち上げ、企業、団体の枠組みを超えた展開を仕掛けていく。

まず、西表島が直面している課題を知ることから―――。

制限速度を超えた観光客のレンタカーが引き起こす交通事故

近年、交通事故によって命を落とすイリオモテヤマネコが増えている。

2018年は、過去最悪だった2016年の7件を上回る、9件の事故が発生。

(写真提供:NPO JTEFトラ・ゾウ保護基金 ヤマネコパトロール)

沿岸部沿いを行く西表島唯一の幹線道路(県道白浜南風見線、総延長約50㎞)は、イリオモテヤマネコの行動圏内を横切っている。

イリオモテヤマネコの交通事故は、とくに夕方から夜間にかけて集中して発生。オーバーツーリズムによってレンタカーの走行台数も走行速度も上がっていき、島の制限速度40km/hを超えて突っ走る観光客が、交通事故を引き起こすという。

こうした問題に対し、地元の人たちらによる「JTEFトラ・ゾウ保護基金 やまねこパトロール」がパトロールしているが、事故件数は増えていくばかり。

そこで KEEN 率いる『Us 4 IRIOMOTE』は、さまざまな角度から課題解決へむけてアクションを起こしていく構え。そのおもな活動は……?

エシカルツーリズム提唱と基金支援

Us 4 IRIOMOTE のおもな活動は、ツーリストに旅の考え方を変えていくアクション、「エシカル・ツーリズム」の提唱。動物・自然保護を展開する団体を支援。西表島ドキュメンタリー映画の制作、の3つ。

エシカルツーリズムとは、倫理的という意味のエシカル(ethical)とツーリズムをあわせたことば。

これまでの「消費型の旅」とは違い、観光客と、それを受け入れる観光地域や住民、観光業者などすべてがハッピーになれる観光のありかた、エシカルツーリズムを提唱すべく、いろいろな手段で発信していくという。

また、Us 4 IRIOMOTE 基金も設立。2019年4月に発売する KEEN の新作『UNEEK EVO』(ユニーク エヴォ)の売り上げの10%をはじめ、協賛企業、個人寄付、クラウドファンディングやチャリティグッズの販売などを通じて基金を集め、Us 4 IRIOMOTE の活動に活用していく。

この新作フットウェア『UNEEK EVO』は、2本のコードと1枚のソールで編み上げられたオープンエア・スニーカー『UNEEK』(ユニーク)に、エンジニアードニットを取り入れたタイプ。デザインには、イリオモテヤマネコの柄がモチーフに。
 
 
―――動きはじめた、西表島を「知ろう」「守ろう」「話そう」「残そう」のアクション。Us 4 IRIOMOTE。

西表島は、2020年度の世界自然遺産の候補地としても名を連ね、登録されるとさらに観光客の増加が見込まれ、それによるオーバーツーリズムの進行が懸念されている。

こうした課題に立ち向かう KEEN 率いる『Us 4 IRIOMOTE』は、パートナー団体・企業と連携し、やまねこパトロール隊員の増員、西表島で活動するガイドむけ講習会、子供むけ環境ワークショップ、エシカルツアーなどに取り組んでいく。
 

<最上段の画像>
左から
戸川久美氏
写真家の仲程長治氏
キーン・ジャパン合同会社竹田尚志ゼネラルマネージャー
環境省 西表野生生物保護センター竹中康進氏