写真:JR西日本

――アフター5に行くならどっち?

今夏、JR大阪駅に現れた謎のラッピング。

御堂筋口から大阪環状線ホーム下階段【上り用階段】にて、2019年7月30日(火)~8月5日(日)に実施された、その名も「大阪環状線総選挙」。

福島派の人は青い部分を、天満派の人は赤い部分を歩く。センサーが歩行者を感知し、投票数をリアルタイムでモニターに表示する、という仕掛け。

実はこれ、駅の混雑緩和を図るちょっとした実験だったんです。

JR西日本と大阪大学は、この総選挙期間中の階段利用数・エスカレーター利用数を翌週のデータと比較。

ラッピングを施していた実験期間の平均階段利用数が19,499人/日であったのに対し、翌週は19,311人/日。エスカレーター利用数は実験期間が平均37,452人/日、翌週は38,583人。

もちろんお盆だったり淀川花火(8/10)などのイベントがあったりで純粋に数字を比較することはできませんが、この影響を排除した統計処理を行ったところ、実験期間中の階段利用者数は1日あたり1,342人増加したと推計できたとのこと。

つまり、実験に参加するためにわざわざ階段を選ぶ人が有意に増えたということ。「混雑緩和のためにエスカレーターではなく階段を利用してください」と呼びかけるより、このような遊びを取り入れた方が利用者の心理的負担も軽くて協力しやすいのかもしれませんね。

人の行動を変える「仕掛学」を提唱する大阪大学大学院経済学研究科の松村真宏教授は、実験結果を受けて「このお題を毎週変えることでこの階段を通ることが通勤・通学の楽しみになり、階段利用が習慣化するようにできればと考えています」とコメント。

実験を通じて、時間・曜日・気温などによる利用状況の違いや条件による階段の左右通行量の違いなども明らかになったようで、今後も同じような取り組みを続けていけば駅の施設整備・案内表示改善に役立つ知見が得られるかもしれません。次回はどんなお題で実施するのか、楽しみですね。

ちなみに「福島派VS天満派」の投票結果は、福島派が50,731票(人)、天満派が85,759票(人)で天満派の勝利に終わったとのことでした。

鉄道チャンネル編集部