出発時の様子 牽引するのはJR貨物のEF65

2020年7月21日午前4時40分頃、「THE ROYAL EXPRESS」(ザ・ロイヤルエクスプレス)と電源車「マニ50 2186」がJR貨物のEF65に牽引され伊東駅を出発、北海道へと旅立ちました。いわゆる「甲種輸送」です。

「THE ROYAL EXPRESS」は伊豆急行が所持し東急が運営する豪華観光列車。ちょうど三年前の2017年7月にデビューしました。

THE ROYAL EXPRESS

車両は伊豆急アルファリゾート21を改造したもので、外装・内装は水戸岡鋭治さんが手掛けています。静岡県産の食材を使った豪華なお料理を楽しみながら贅沢な時間を過ごせる観光列車として、普段はJR横浜駅~伊豆急下田駅間を運行しています。

伊豆の観光列車がなぜ北海道へ?

列車デザインイメージ 画像:JR北海道 ©ドーンデザイン研究所

ADVERTISEMENT

答えは「北海道を応援するため」です。

2019年初頭、JR北海道・JR東日本・JR貨物・東急が協力し、北海道胆振東部地震で被災した道内の観光振興と地域活性化を目的として、「THE ROYAL EXPRESS」を運転するという計画を発表しました。

そうして生まれたのが「THE ROYAL EXPRESS ~HOKKAIDO CRUISE TRAIN~」です。2020年夏は8月28日出発分から計3回の運転を予定しており(※)、JR北海道のディーゼル機関車、JR東日本から東急に譲渡された「マニ50 2186」、そして5両の「THE ROYAL EXPRESS」車両で北海道を走ります。

※……もともとは計5回の予定でしたが、新型コロナウイルスの影響により初回と2回目の運行は2021年に振り替えとなりました。計5回の応募枠150名に対し、約8.2倍となる計1,232名から応募がありました。

ゆうマニも装い新たに登場

装いも新たに登場した「マニ50 2186」

「THE ROYAL EXPRESS」は直流電車ですので、そのままではJR北海道の交流電化区間や非電化区間を走行できません。そのため、牽引用にディーゼル機関車、車内設備の電源確保のために電源車がそれぞれ必要となります。

電源車に抜擢されたのは「マニ50 2186」――かつて「リゾートエクスプレスゆう」の相方として活躍したため「ゆうマニ」とも呼ばれた車両です。

2019年7月東急に譲渡され、同年秋口頃から半年かけて改造を実施。外観を水戸岡鋭治さんのデザインでリニューアル。そうして「THE ROYAL EXPRESS」と同じロゴマークを付け、報道陣の前に姿を現しました。

ロゴマークは「THE ROYAL EXPRESS」と同じ
「THE ROYAL EXPRESS」先頭車の連結部周りにも注目

ちなみに北海道で「マニ50 2186」と「THE ROYAL EXPRESS」を牽引するディーゼル機関車のデザインも水戸岡鋭治さんが手掛けています。

今は北海道クルーズに全力投球

東急が電源車を購入したのは鉄道史に残るビッグニュースであり、今回の「THE ROYAL EXPRESS」北海道クルーズ以外でも使用するのではないか、という声も(ごく一部では)ありましたが、担当者によれば現在のところ他の計画はなく、「まずは北海道運行をしっかり成功させることが我々の使命と考えている」とのことでした。

新型コロナウイルス対策として、ホームでの歓迎を取りやめ、運行中も車内を定期的に消毒するなど安全性にも配慮。乗車人数はプラン発表時と変わりませんが、「THE ROYAL EXPRESS」自体車内換気をしっかり行える車両であり、もとより人数を絞って募集しているためソーシャルディスタンスの確保も問題ないようです。

8月末頃から北海道を走り始める豪華観光列車、そして新たな装いで登場するディーゼル機関車と電源車。息をのむほど美しい列車たちが北海道を駆けていく様が目に見えるようで、約ひと月後の運行が楽しみでなりません。

文/写真:一橋正浩