車両にみる日本と世界の鉄道 日本は電車、世界は貨車が主役

2020.08.08

東南アジアのタイも海外展開の有望国。2016年には日本が技術支援したパープルラインが開業した=写真は首都・バンコクのスカイトレイン= 写真:Pixta

はじめまして。42年間勤めた鉄道記者を昨年退職し、公共交通の再生をお手伝いしながら雑誌中心にコラムを寄稿しています。目標は読んだ方が鉄道に興味を持ち、ますます好きになる話題の提供。初回は鉄道車両を取り上げ、日本と世界の違いを考えましょう。

日本は電車、世界は貨車が主役

日本の鉄道の特徴を表すのが車両数です。鉄道車両は昨年4月1日時点で全国のJRと私鉄・公営合わせて6万1200両。最も多いのは電車の4万9614両で、貨車の7635両が続きます(業界団体調べ)。

ちなみに、「日本の電車はゴマン(5万)とある」というのが簡単な覚え方。気動車2709両、客車308両、機関車は蒸気(SL)20両、電気(EL)561両、ディーゼル(DL)353両で、数字上からも日本は完全な〝電車王国〟です。

しかし、世界に目を向ければ状況は大きく変わります。データが少々古い点をお許しいただいた上で2011年の概数を示せば、世界の鉄道車両総数は618万4530両。最も多いのは貨車の546万9000両で、全体の9割近くを占めます。

電車(在来線用)は13万5000両。これに高速鉄道、地下鉄、路面電車合わせても28万7000両で、貨車のほぼ20分の1しかありません。客車は電車より少ないものの23万8700両もあり、高速鉄道や都市鉄道を除けば、世界ではまだまだ機関車けん引の客車列車が幅を利かせます。

日本のシンカンセンを世界へ

インドの高速鉄道プロジェクトはJR東日本が主導。同社は日本の新幹線システム=写真は東北・北海道新幹線のE5系=採用を働き掛けています。 写真:Pixta

「政府が鉄道システム輸出に力を入れている」という話を、お聞きになった方もいらっしゃるでしょう。新幹線の輸出先として話が進むのがインドやアメリカですが、話は簡単ではありません。

輸出元の鉄道車両メーカーは、日本と世界で大きな違いがあります。俗に〝世界のビッグスリー〟と呼ばれるのがカナダのボンバルディア(鉄道はドイツ、中国など)、ドイツのシーメンス、フランスのアルストム。鉄道部門の売り上げは概算・推計ながらシーメンス1兆1200億円、アルストム1兆100億円、ボンバル9800億円もあります。

対する日本勢は、参考値ですが主要メーカー合計でも5000億円ほどで、ビッグスリーの半分程度しかありません。

ビッグスリーは欧州以外の売り上げが3~4割あるのに対し、日本企業の海外事業収入は2割前後。日本は国内に十分な市場があったため鉄道工業界は輸出に熱心といえず、〝井の中のかわず大海を知らず〟の一面があった点は否定できません。

世界を席巻する「中国中車」

最近、ビッグスリーをしのぐ存在となっているのが「中国中車」。中国は鉄道車両生産を北車と南車の2社に分けてきましたが、2014年末に両社を統合。中車の売り上げは推計3兆6000億円もあり、ビッグスリーをしのぎます。

中国マネーに対抗するためアルストムとシーメンスは経営統合を模索しましたが、公正な競争を阻害することから欧州当局は不認可を決定。アルストムは代わってボンバルの鉄道部門を買収することとし来年、中車に次ぐ世界2位のメーカーが誕生する見通しです。

日本企業では日立製作所が海外展開に熱心で、最近もインド国鉄向け電気機関車用変圧器受注のニュースが報じられました。とはいえ、メイドインジャパンが世界で戦うにはまだ力不足です。日本の鉄道に足りない点は、機会を改めて考察したいと思います。

文:上里夏生


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