東海道新幹線の新復旧機材お披露目 脱線復旧の所要時間がおよそ半分に

2020.11.05

脱線復旧用の機材

2020年11月5日(木)、東海道新幹線 三島車両所で行われた総合事故対応訓練の様子が報道陣に公開されました。

総合事故対応訓練は、JR東海が大規模災害や不測の事態の発生に備え、大阪の鳥飼車両基地や静岡の三島車両所で毎年実施している大規模訓練です。訓練内容は年によって異なり、たとえば2018年は「におい」を体感する訓練、2019年はN700S確認試験車によるバッテリー自走訓練などが取り入れられています。

今年の訓練項目は線路設備復旧、飛来物の除去、バラストの流出など、猛威を振るう台風や地震災害などを想定した内容でしたが、車両が脱線した場合を想定した「脱線復旧訓練」では、新機材「台車回転補正治具」を組み込んだ復旧作業が行われ、従来のおよそ半分ほどの時間(30分~1時間程度)で新幹線車両を載線することに成功しています。

従来のやり方との違いは

横送り装置は昨年の訓練で試作機が公開され、現在は量産型が導入されている 画像:JR東海

従来は台車をジャッキで持ち上げる方式を採用していました。台車を浮かせるためには四か所のベアリングにシリンダーをセットする必要があり、また車体を台車から持ち上げた後に横に送ってレール上に戻す、いわゆる「横送り」を行う際に、ジャッキを横送り用の道具に架け替える作業が必要でした。

今回の方式では、あらかじめ台車と車体を連結させ、台車ではなく車体を持ち上げます。そしてジャッキで上げた状態のまま横送りをする。ただし台車がレールと平行して脱線しているとは限りませんので、レールに戻す際に台車の回転を補正する必要が生じます。

ここで力を発揮するのが、現場の社員が考案したという「台車回転補正治具」です。これは台車と車体をつなぐヨーダンパを強制的に縮めたり伸ばしたりするもので、車体に対して台車を相対的に回転させることでレールと平行した状態に戻します。

コンセプトは「より迅速に、安全に復旧できるもの」

質疑応答に答えるJR東海 取締役 常務執行役員 新幹線鉄道事業本部 大山隆幸本部長

新機材開発のコンセプトは「より迅速に、安全に復旧できるもの」ということでしたが、作業工程を一連のステップの中で行うことで時間短縮につなげられたほか、「台車ではなく車体を直接持ち上げるため、ジャッキが海側山側それぞれ一つずつで済み、機材を軽量化できる」といったメリットもあります。

ただ、新幹線の床下は今回採用されたような方式を前提とした構造ではありませんので、まず連結できるかどうかから検証を始めて、検証試験を何度も繰り返しながら試行錯誤を行う必要がありました。

JR東海 新幹線鉄道事業本部 大山隆幸本部長は、「以前は古い機材で行っていたんですけど、もっと作業員も人数が必要だったと記憶しています」と感嘆し、「脱線したときに一番近い車両基地から復旧隊が出かけていきますので、この新しい機材の練度をどんどん高めるということが一番の課題」と語りました。

なお、JR東海発足後、東海道新幹線では本線上の脱線事故は一度も発生していないそうです。

文/写真:一橋正浩


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