埼玉県とさいたま市は、長年の懸案であった埼玉高速鉄道線(地下鉄7号線)の浦和美園〜岩槻駅間の延伸計画について、2041年の開業を目標とすることで合意しました。2026年3月末までに鉄道事業者へ事業要請を行い、総事業費約1,440億円を投じて「埼玉スタジアム駅(仮称)」を含む新駅を設置します。
これにより、サッカー観戦の利便性向上はもちろん、岩槻エリアから都心へのアクセスが劇的に改善されます。本記事では、最新の延伸ルート、新駅の場所、そして地域住民などへの影響を詳しく解説します。

2041年開業へ、ついに動き出す「地下鉄7号線」延伸

さいたま市は、埼玉高速鉄道(SR)の延伸事業(浦和美園~岩槻)について、事業実施要請に必要な計画の素案をまとめました。

計画によると、開業目標は2041年。2026年3月末にも、営業主体となる埼玉高速鉄道と、建設を担う鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対し、事業の実施を要請する予定です。

さいたま市の清水勇人市長が2026年度(令和8年度)の施政方針で「地下鉄7号線の延伸」実現に向けた本年度の試算について言及。投資効率の指標である「費用便益比(B/C)」が1.2、累積資金収支が黒字になるまでの年数を示す「収支採算性」は27年となり、国の支援などを受けるために必要な「都市鉄道等利便増進法」適用の見通しが立ったと明かしました。同時に、県と市の連名で事業実施要請を行う考えを示しています。

ルートは「浦和美園⇒岩槻」新駅は2つ設置

埼玉高速鉄道線(地下鉄7号線)延伸に関する要望書より地下鉄7号線の延伸構想

延伸区間は、現在の終点である浦和美園駅(さいたま市緑区)から北へ約7.2km延び、東武アーバンパークライン(野田線)の岩槻駅(同市岩槻区)へ接続します。

この区間には、以下の2つの新駅(中間駅)が設置される計画です。

・埼玉スタジアム駅(仮称)
・中間駅(名称未定)

これまで浦和美園駅から徒歩で約15〜20分かかっていた「埼玉スタジアム2002」へのアクセスが、新駅設置により劇的に改善される見込みです。また、終点の岩槻駅で東武アーバンパークラインと結節することで、さいたま市岩槻区から東京都心(東京メトロ南北線直通)へ乗り換えなしでアクセス可能となります。

「埼玉スタジアム駅(仮称)」設置と延伸による効果は?

浦和美園駅から埼玉スタジアムへ向かう道(画像:Pixta)

注目するのは、やはり「埼玉スタジアム駅」の設置と、岩槻駅接続によるネットワーク効果です。

サッカー日本代表戦や浦和レッズの試合開催日には、浦和美園駅からスタジアムまでの歩行者専用道路が赤く染まるほどの混雑を見せますが、新駅ができればこの動線が一変します。スタジアム直結に近い利便性は、観戦客にとって大きなメリットとなるでしょう。

また、広域で見ると、この延伸は「鉄道空白地域の解消」だけでなく、災害時の代替ルート確保という側面も持ちます。現在、大宮駅周辺に集中している南北の移動手段に加え、岩槻経由で都心へ抜ける太い動脈ができることは、埼玉県東部エリア全体の価値向上につながります。

中間駅周辺はどうなる?

地下鉄7号線中間駅まちづくり方針改定版より まちづくりのイメージ

浦和美園地区と岩槻駅周辺地区のちょうど中間に位置する岩槻区浮谷地区。さいたま市が2026年1月13日に公表した「地下鉄7号線中間駅まちづくり方針改定版」によると、現在は公共交通の空白地帯となっているこのエリアに、約120ヘクタールの面積を確保できるとのこと。そこに約1万人の定住人口を想定した都市機能を集約。住宅の整備はもちろん、商業施設や産業施設の誘致をセットで進めることで、子ども・子育て世代、ワーカー世代、リモートワーカーをターゲットとした「ここに住みたい」と思える環境づくりを推進。単なるベッドタウンではなく、多様なワークスタイルに対応した「職住近接」の魅力を持つ街を目指します。

クルマ社会からの脱却? 歩きたくなる駅前空間に

これまでの郊外駅前といえば、広大なロータリーに車が並ぶ風景が一般的でした。今回は車中心の設計ではなく、歩行者が安全かつ快適に移動でき、思わず滞在したくなるような広場や空間づくりを目標に掲げています。

インフラの相乗効果!「国道463号バイパス無料化」がカギ

また、このエリアの近くを走る「国道463号バイパス(新見沼大橋有料道路)」は、2026年11月27日に開通から30年を迎えるため、将来的に原則無償化が予定されています。これが実現すれば、中間駅周辺は「鉄道による都心アクセス」と「車による広域移動」の両輪を備えた、最強の交通利便性を手に入れることになります。

総事業費は1,440億円、課題は「速やかな着工」

事業費総額は約1,440億円と試算されています。さいたま市は2026年度(令和8年度)予算案において、都市計画決定に向けた環境影響評価(アセスメント)への着手や、中間駅周辺のまちづくり推進を掲げています。

今後、都市計画決定や国庫補助事業化といった手続きを経て工事に着手することになりますが、2041年という目標に向け、スムーズな合意形成と財源確保が鍵となります。

かつて「赤字なら実施できない」という議論もありましたが、市は採算性の精査を進め、課題をクリアできるとの判断に至りました。開業まで約15年。埼玉の鉄道地図を書き換える一大プロジェクトがいよいよ始動します。

25年前のさいたま市誕生以来の悲願ともいえる地下鉄7号線の延伸。完成すれば、岩槻エリアの再開発や埼玉スタジアム周辺の賑わい創出など、沿線風景は大きく変わりそうです。まずは3月末の事業要請の動向に注目しましょう。

(画像:さいたま市・埼玉県、TOP画像:PIXTA)

鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

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