「さいたま市新庁舎」地上18階・展望施設・広場も!さいたま新都心へ移転で31年度供用開始、700億円規模の”基本設計(素案)”全貌とは

さいたま市の本庁舎移転計画が、いよいよ本格的に動き出します。市は、新庁舎の「基本設計説明書(素案)」を公表しました。合併から30年、浦和・大宮でもない新たな行政の舞台は、さいたま新都心です。
老朽化や狭あい化い加え、災害の激甚化、行政機能の分散といった課題に対応するために、地上18階・高さ約90mの免震構造ビルをさいたま新都心に建設。総事業費は約700億円 を見込み、2031年度の供用開始を目指します。市民に開かれた「展望施設」や「全天候型広場」、そして「防災中枢拠点」としての機能など、新庁舎計画の全貌を詳しく解説します。
浦和・大宮ではなく「さいたま新都心」が拠点に!
さいたま市は2001年5月1日、浦和市・大宮市・与野市の3市が合併して発足しました。03年4月1日に政令指定都市へ移行して9区(旧大宮市域=西・北・大宮・見沼、旧与野市域=中央、旧浦和市域=桜・浦和・南・緑)を設置し、05年4月1日に岩槻市を編入して岩槻区が加わり、現在の10区体制となりました。

現在のさいたま市本庁舎は、旧浦和市役所を利用しており、JR浦和駅・北浦和駅・中浦和駅から、どこからも徒歩15~20分ほどかかるという場所にあります。浦和が行政の中心、大宮が商業・交通の要として発展し、その中間に位置する「さいたま新都心」は新たな都市拠点として機能しています。さいたま市は、JR各線と新幹線が交わる東日本有数の交通拠点でもあります。

新さいたま市本庁舎の計画地は。大宮区北袋町の「さいたま新都心駅東口バスターミナル街区」で、現機能の整理を前提に新庁舎を配置します。JRさいたま新都心駅からは、歩行者デッキ延伸で繋がり、徒歩8分ほどになる予定です。概算事業費は、2025年10月時点で、約700億円(調査・設計費 約25億円、本体工事費 約640億円、移転費 約35億円)と試算しています。

どんな建物になるの?
現在の本庁舎は築約50年で、経年劣化、執務空間の狭あい化・分散化、バリアフリーの不足などが課題とされています。新庁舎は、行政の中枢機能を集約し、窓口動線の明確化やデジタル化による手続きの効率化、議会機能との近接配置による政策形成のスピード化を図るとしています。市は「市民と職員が共につくる開かれた庁舎」を掲げています。
素案では、行政棟・議会棟・中広場棟で構成し、民間機能の導入も想定。規模は地上18階・地下1階、高さ約90メートル、延床約64000平方メートルとしており、詳細は今後の設計で精査するとしています。

行政棟の2階がエントランスとなり、4、6~17階が執務スペースになります。市民が利用できる場所として、低層部には中広場・外広場・階段広場という3つの広場が、高層の18階には展望施設が計画されています。
議会棟や中広場棟を含む複合構成により、市民活動や情報発信の場としての利活用も想定しているということです。


2階に設置されるエントランスへの来庁者視点の導線計画として、ワンストップ窓口の拡充、案内・誘導の明確化、バリアフリーの徹底、屋内外の交流空間の整備を掲げています。
さいたま新都心駅方面と2階エントランスとをつなぐ歩行者デッキは、車両導線と人の導線が分離されることで、安全で、上下移動や段差がないバイアフリーな導線となります。
2階デッキレベルの外広場からは、行政棟や議会棟、中広場棟にスムーズにアクセスができるようになるといいます。

芝生などの緑が多い外広場から見ると、3つの棟が一体感を持つような景観となり、外広場の下には、駐車場が設けられる計画です。

免震構造による災害時のベース機能、環境への配慮
素案では免震構造を採用し、最大7日分の備蓄と、災害時の受援体制を支えるヘリポート等の整備を検討。停電時の自立性を高める非常用電源、通信の多重化、市民向け情報発信機能の強化など、広域災害を想定したBCP(事業継続計画)を計画に織り込むとしています。また、災害時の連携に配慮して、7階の危機管理センターに近接した8階に視聴関連の諸室が配置される計画です。

環境面では、自然採光・自然換気の活用、機器高効率化、再エネ導入などの省エネ設計を前提に、カーボンニュートラルを見据えた方針を示しています。
業務面では、電子申請・キャッシュレス、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用、「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」を導入してのフリーアドレスや集中ブースなどを備えた柔軟な執務スペースの整備など、デジタル技術の実装を段階的に進めるとしています。
さいたま市の新庁舎計画は、単なる「市役所の引越し」ではなく、防災機能の強化、市民交流の促進、職員の働き方改革を同時に実現する、まさに都市経営の拠点づくりです。2031年度の供用開始 に向けて、今後は令和8年度(2026年度)の事業者選定、令和9年度(2027年度)からの工事着工が予定されています。 なお、この素案については、11月28日まで市民意見(パブリック・コメント)が募集されます。 まさに今、未来のさいたま市のシンボルづくりに参加できる機会と言えるでしょう。
(写真:さいたま市 PIXTA)
鉄道チャンネル編集部
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