JR東日本が常磐線全線運転再開で大賞 「日本鉄道賞」表彰式の様子 特別賞は「アンパンマン列車」「京急ミュージアム」「N700S」

2020.12.19

日本鉄道大賞を受賞したJR東日本。深澤社長(右から2人目)と古関選考委員長(右端)

鉄道業界の優れた取り組みを顕彰する「日本鉄道賞」の19回目の表彰セレモニーが2020年12月8日、東京・霞ヶ関の国土交通省(府省庁共用会議室)で開かれ、最優秀賞(日本鉄道大賞)のJR東日本のほか、選考委員会特別賞のJR四国、京浜急行電鉄、JR東海の各社が表彰を受けました。JR東日本の受賞理由は「全線運転再開~沿線の方々の思いを乗せて再びつながった常磐線~」で、2020年3月に全通した常磐線の復旧が「社会に明るい希望を与えた」と評価されました。

本稿は日本鉄道賞と、常磐線復旧をサイドストーリーを含めて紹介。鉄道ファンの皆さんが興味を持っていただけそうな、特別賞3件についても報告します。

鉄道開業130周年記念で創設

日本の鉄道開業日の10月14日が「鉄道記念日」というのは、皆さんご存じでしょう。鉄道の日には業界内外向けの催しが開かれます。鉄道ファン向けは、2020年はコロナ禍で残念ながら中止でしたが、東京・日比谷公園の「鉄道フェスティバル」が代表例。一方、鉄道業界内で最高の栄誉とされるのが日本鉄道賞で、鉄道開通130周年の2002年に創設されました。

主催は「鉄道の日」実行委員会。実行委メンバーは国交省、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)、全国の鉄道事業者などで、国交省が発表することから、実質は国による鉄道分野の表彰制度と考えられます。

日本鉄道賞は公募制で、今回は8件の応募を東京大学大学院工学系研究科の古関隆章教授(選考委員長)、交通新聞社の中村直美常務、交通環境整備ネットワークの原潔代表理事、フリーアナウンサーの久野知美さん、国交省の上原淳鉄道局長らで構成する選考委員会が審査しました。

被災線区の移設復旧で安全性向上

双葉駅でのセレモニー 国交省の発表資料から

選考委はJR東日本を、「被災線区を安全性の高い新たな線路に移設する形で復旧。その足跡は選考委員全員に、率直な感銘を与えた(大意)」と評しました。

2011年3月11日の震災で大きな被害を受けた常磐線ですが、JR東日本は1ヵ月後の4月12日までに上野(日暮里)―いわき間と亘理―岩沼間(駅名は起点の日暮里方から表記します)で運転を再開。その後、徐々に運転区間を延伸し、2017年10月21日の竜田―富岡間の復旧後は、福島第一原子力発電所最寄りの富岡―浪江間が唯一の不通区間として残りました。

線区を管轄するJR東日本水戸支社は、高濃度放射線下での困難な状況に挑戦。放射線量に応じて表土を必要な厚さまで取り除き、モルタルの吹き付けや植生基盤の覆いで安全を確保しながら作業に当たりました。

JR東日本は単純な復旧でなく、鉄道再生による地域や線区のイメージアップを目指しました。象徴といえるのが広野―木戸間に2019年4月開業した新駅「Jヴィレッジ」(当初臨時駅、2020年3月から常設駅)。駅名で分かるようにサッカーナショナルトレーニングセンター・Jヴィレッジの最寄り駅で、地域のシンボルとして存在感を増します。

国、自治体、事業者などの創意で復旧

ここからしばし日本鉄道賞を離れ、常磐線復旧のサイドストーリーをたどります。2014年ごろまで沿線には、「常磐線は本当に復旧するのか」の懸念がありました。そうした疑念を払しょくしたのが、政府が2014年に設置した「浜通りの復興に向けたJR常磐線復旧促進協議会」。国交省、環境省、復興庁の3省庁を中心にJR東日本や関係自治体も交えて復旧方法を精査しました。

環境省が例示したのが、常磐自動車道の復旧。除染と道路整備の並行実施で工期を短縮、盛り土の表土を入れ換えながら道路も再舗装する手順で、鉄道でも類似の方法が採用されました。

2015年3月には、政府全体として早期の全線復旧・運転再開方針を確認。JR東日本を中心に国や自治体、関係機関が「一日も早い運転再開を」の思いで一致したことが、震災9年目での全線運転再開、そして今回の日本鉄道賞受賞につながったといえるでしょう。

セレモニーには、JR東日本から深澤祐二社長と小川一路執行役員・水戸支社長が出席。選考委員からは、「コロナという未経験の困難に直面する2020年にも、JR東日本の経験は役立つ」の期待が示されました。

「地域に笑顔」(JR四国)、「社員の想い」(京急)、「未来を駆ける」(JR東海)

「予讃線宇和海アンパンマン列車」(左)と「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」 国交省の発表資料から

特別賞3社の表彰件名は、JR四国が「四国に元気と笑顔を!~アンパンマン列車とともに20年~」、京急が「歴史的名車に社員の想いを込めて~五感で感じる京急ミュージアム~」、JR東海が「先進技術で未来を駆ける至高の新幹線車両・N700Sの開発」。

キャラクター列車の先駆けが、2000年10月に初登場したJR四国の「アンパンマン列車」です。鉄道収入の減少傾向に歯止めを掛けようと、ライセンスビジネスの経験や知識がない中、高知県出身の漫画家・やなせたかしさん(故人)の理解も得て手探りで実現にこぎ着けました。以来20年、「JR四国といえばアンパンマン列車」のイメージを定着させて、いわゆるブランディングに成功。東日本大震災ではJR関係会社の協力により被災地で出張運転され、東北の子どもたちに笑顔を届けました。選考委は「これからも走り続けてほしい」のエールを送りました。

鉄道界屈指の名車としてファンの多い京急デハ230形 国交省の発表資料から

京急ミュージアムは、創立120周年記念事業の一環として2020年1月、横浜市のみなとみらい21地区の本社ビル1階に開設されました。館内には、約2年を掛けて復元した歴史的名車デハ230形をはじめ、京急ラインジオラマ、電車シミュレーションといった〝本物〟にこだわった展示物を用意。コロナの影響を受けつつも来館者を迎え、地域に新たな賑わいをもたらしています。多くの来館者は、鉄道の必要性や社会の期待を社員に再認識させ、社内外に向けて大きな効果をもたらしています。

富士山をバックに快走する「N700S」 国交省の発表資料から

鉄道ファンばかりでなく社会にインパクトを与えたN700Sは、先駆的な技術を多数導入した日本を代表する高速鉄道車両です。具体的には、高い安全性を実現するブレーキシステムや状態(常態)監視、優れた快適性の実現、高速鉄道で世界初のバッテリー自走システムの採用などが挙げられます。また、0系新幹線と比較して50%以上の高い省エネ性能にも注目。日本の新幹線のステータスをさらに高める、高速鉄道車両の開発が高評価されました。

表彰セレモニーにはJR四国の長戸正二常務・鉄道事業本部長と真鍋充生営業部アンパンマン列車事業推進室長、京急の原田一之社長と道平隆取締役専務執行役員・鉄道本部長、JR東海の上野雅之執行役員・総合技術本部副本部長と田中英允新幹線鉄道事業本部車両部担当部長が出席しました。

特別賞のJR四国。長戸常務(左から2人目)と久野選考委員(右端)
特別賞の京急。原田社長(右から2人目)と中村選考委員(右端)
特別賞のJR東海。上野執行役員(右から2人目)と綱島均選考委員(日本大学生産工学部教授。右端)

文/写真:上里夏生


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