思い出だけがつのります 2【木造駅舎コレクション】071
※2019年3月撮影
トップ画像は、肥薩線真幸(まさき)駅1番ホームの「いさぶろう・しんぺい」。
既述の様にレンタカーでの木造駅舎訪問は、大隅横川駅に向かっています。でも真幸駅の木造駅舎も魅力があるので過去のプライベートな旅で撮った写真を引っ張り出して御紹介します。
肥薩線の最高地点、標高537mの矢岳駅を出てすぐに宮崎県に入り、肥薩線で最も長い矢岳第一トンネル(2096m)を25パーミルの下り勾配で一気に駆け下ります。
ピンボケですが矢岳第一トンネル南側坑口。後藤新平揮毫の「引重致遠」(いんじゅうちえん)の石版が辛うじて見えます。北側の山縣伊三郎の「天險若夷」(てんけんじゃくい)に続けると「天下の險(難所)を夷(たいら)に和(やわらげ)、重い荷物を引いて遠くへいける」という意味です。実際にこのトンネルの完成で青森から(関門海峡は船ですが)鹿児島まで鉄路で結ばれました。
※2019年3月撮影
矢岳第一トンネルは、1906年(明治39年)9月に着工、開通が1909年(明治42年)11月、3年以上の歳月を費やした難工事でした。
しかし、急勾配のトンネルを抜けると日本三大車窓のひとつ「矢岳越え」です。筆者は4回通っていますが、一度も桜島が見えたことはありません。日頃の行いの結果です。(泣)
※2019年3月撮影
やがて真幸駅が車窓左下に見えて来ます。1972年(昭和47年)の豪雨で裏山から土石流で運ばれた8トンの巨岩がホーム上、左に見えます。
※2016年8月撮影
次いで駅舎が見えます。
※2016年8月撮影
通り過ぎてもホームが長いので全体は見えません。緑が少ないのは撮影時期が異なるからです。
※2019年3月撮影
スイッチ・バックの説明用に真幸駅を出発して吉松方面に向かう車窓の写真です。奥が矢岳駅から降りて来た線路。手前はスイッチ・バックして真幸駅に向かう線路です。
※2016年8月撮影
吉松方面は左に進みます。手前にもう1本、真幸駅に繋がる線路。
※2016年8月撮影
右奥がスイッチ・バック用の引き込み線。
※2016年8月撮影
スイッチ・バックの引き込み線で車両は進行方向を替えます。キハ40の1両で人吉から吉松に向かった時なので乗客は筆者と右奥の初老のご夫婦だけ。仲良くなった運転士さんについて反対側の運転席に行きます。これは人気のある「いさぶろう・しんぺい」の混んだ車内ではできません。
※2016年8月撮影
右に上の真幸駅を出た吉松行が通っていた線路。見難いので黄色いラインが矢岳駅方面に上ってゆく線路。右奥に真幸駅ホームが見えます。
※2016年8月撮影
吉松行は2番のりば、駅舎と反対側に入線します。
※2016年8月撮影
駅舎が見えました。
※2016年8月撮影
キハ40 1両の吉松行は、観光列車ではないのですぐに出発します。駅舎を見に行くことはできません。
※2016年8月撮影
ここからはトップ画像の「いさぶろう・しんぺい」人吉方面行に乗った時の写真です。観光停車するので駅舎の写真が撮れます。
※2019年3月撮影
駅舎の駅名標。
※2019年3月撮影
真幸駅正面。
※2019年3月撮影
駅出入口。上の写真との間には5年の歳月があります。「いさぶろう・しんぺい」のお客さまで駅舎内は出発直前までいっぱいだったので2回とも撮影していません。
※2014年12月撮影
こちらは乗客の少ないキハ40の開いている扉から撮った写真。「幸福の鐘」と駅名標。「いさぶろう・しんぺい」で来ると鐘を鳴らしたい人が列を作っています。
※2016年8月撮影
これは2014年12月の写真です。駅舎は左側にあります。
※2014年12月撮影
同じ時に撮ったホーム上の巨岩。木の柵がありますが、上の2016年8月の写真では巨岩だけになっています。2019年の3月には新しい柵(チェーン)がありました。
※2014年12月撮影
1972年(昭和47年)7月6日午後1時45分頃山津波が発生。真幸駅と周辺の集落を襲い、住宅など57棟が流失。死者4名という惨事でした。真幸駅は復旧されましたが、近隣の被災住民は全員転出したため駅周囲は無人地帯になりました。
その後(古いデータ 2010年の国勢調査)、真幸駅を中心にした半径500m円内には9世帯17人が暮らしています。奇しくも矢岳駅周辺もほぼ同じ状況。大畑駅は同じ範囲に2世帯7人とさらに少なくなります。山間部の人口希薄地帯なのです。
ちなみに同じ範囲内に筆者の実家のあるJR中央線武蔵小金井駅には、6,657世帯119,008人が犇(ひし)めいています。
(写真・文/住田至朗)
※木造駅舎などJR九州さんの許可をいただいて撮影しています。
※駅などについては『JR全線全駅』(弘済出版社/1997)、『週刊朝日百科 JR全駅・全車両基地01-60』(朝日新聞出版/2012-2013)他を参照しています。
※鉄道撮影は鉄道会社、鉄道利用者、関係者などのご厚意で撮らせていただいているものです。鉄道は感謝の気持ちを持って撮影しましょう。