「ウォール街の資金がここ数年、3Dプリンティングに流れ込んでいるのは、積層造形(アディティブ・マニュファクチャリング:AM)技術が工場で重要な位置を占めるようになるためです」

そう話すのは、アメリカ ミネソタ州 エデンプレーリーと、イスラエル レホヴォトに本拠地を構える3Dプリンタメーカー「ストラタシス」(Stratasys)のヨアブ・ザイーフ(Yoav Zeif)CEO。

同社の日本法人 ストラタシス・ジャパンは6月20日、事業戦略説明会を開き、日本国内市場では今後とくに、自動車産業、鉄道・航空・重工業、産業機器、コンシューマー向け事業などに注力していくことを明らかにした。

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積層造形(アディティブ・マニュファクチャリング:AM)シフトの戦略・技術・ソリューションでリードするストラタシス社は、2022年度上半期にカーボンファイバー対応新型3Dプリンタ「F190CR」「F370CR」をリリースするほか、デザイン企業やアパレルメーカーのニーズに対応すべく、布地に直接3Dプリントできる「J850 TechStyle」などもリリース。

試作から最終製品造形・量産までをストラタシスの製品・ソリューション群でワンストップで実現させることで、「積層造形へのシフトがコスト削減・精算迅速化・生産性工場・持続可能性確保という点で、製造業者にメリットをもたらすはず」とヨアブ・ザイーフCEOは伝えた。

路面電車の交換部品もストラタシス社のFDM 3Dプリンティングで

このストラタシスの3Dプリンタと積層造形ソリューションは、すでにホンダやフォードをはじめ、エアバス、ロッキードマーティン、ボルボ、アウディといった自動車・航空機メーカーのほか、シーメンスなどの鉄道・電気系メーカーなどにも入り込んでいる。

たとえばストラタシス社の鉄道用3Dプリンティングソリューションは、動画のようにドイツの路面電車のスカート部分や運転席のアームレストの交換部品にも活かされている。

こうした1回限りのカスタマイズ部品(ワンオフ製品)である交換部品が、同社のFDM(熱溶解積層方式)3Dプリンティングで迅速かつコスト効率よくつくれるようになり、従来の製造方法では数週間かかるところを、数日単位で完成させることで、通常通りの運行スケジュールを確保することにも貢献している。

人機一体・JR西日本・日本信号の「零式人機ver2.0」も

―――2022年第一四半期には、過去6年間で最高の売上高を記録したストラタシス社。

同社は、3Dプリンティングソリューションを提供しながら、自社での3Dプリンタプロダクトも受注製造し、製造部門は年率20%の成長を見込んでいるという。

ストラタシス社 ヨアブ・ザイーフCEOは最後に、同社が得意とする積層造形(アディティブ・マニュファクチャリング:AM)技術によるニーズが増えていることを伝え、その例として、人機一体がJR西日本と日本信号と共同開発する汎用ヒト型重機・高所作業車「零式人機ver2.0」を紹介。

ストラタシス・ジャパンの森道明 代表取締役社長(ストラタシス ノースアジア プレジデント)は、「画像は鉄道の高架線で作業するようす。この零式人機ver2.0のアームや骨格部分は、これまでスチール製などでつくられていたが、われわれの3Dプリンティング技術でカーボンファイバ材大物造形へとシフトさせた」と伝えていた。