「分かりやすく、丁寧に紹介する」

高月さん(左)と鶴さん。鶴さんは「対面して話を聞いてこその取材。コロナ禍のリモートは一問一答になりがちで苦手」と明かしました

鶴さんは、「都電沿線で生まれ育ち、小田急にのめり込んだ」が鉄道ファンのキャリア。大手出版社傘下の編集プロダクションに所属していた1989年、入社試験を受けて鉄道ジャーナル社に入社しました。インタビュー・取材記事は軽く100本を超えます。

その入社試験、鶴さんが強調したのは「分かりやすく、丁寧に紹介する」だったそう。鉄道雑誌の編集志望者となれば、鉄道に詳しいのは当たり前。でも難しいのは、知識をいかに分かりやすく読者に伝えるかです。

「楽な仕事じゃない編集者!」

鉄道に囲まれる鶴さん、友人や鉄道仲間からはうらやましがられます。「好きな鉄道で仕事できていいなぁ」。しかし、それはまったくの誤解。

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「(取材現場に向かう)行きの車内では『取材先で何を聞こうか』と思いをめぐらし、帰りは『聞いた話を、どうまとめるか』で頭はいっぱい。編集者は料理人。仕入れた食材(取材した話)を、いかにおいしい料理(読んでもらえる記事やコラム)に仕立てるか。そこが腕の見せどころで、やりがいです」。

職業病でしょうか、原稿が書けない夢を見ることしばしば。「ファンの皆さんの興味の多くは車両。誌面では、車両から歴史や沿線に話題を広げて、鉄道を広く深く知ってもらえるよう努めている」と語りました。

「いかに鉄道に興味を持ってもらえるか」

続いて東武の高月さん。鉄道会社と記者やライター、そして読者(鉄道ファン)をつなぐのが、広報セクションが発表するニュースリリースです。記者クラブのデスクには日々、各社(もちろん鉄道だけでありません)のリリースが積み上げられます。マスコミで報じられるのは、ほんの一部です。

「いかに記者、そして読者の皆さんに、興味を持っていただけるか。基本は正確、簡潔。取材に対応したり、広報誌を編集するのも広報の仕事です」。

「SL大樹で広がる広報ネットワーク」

東武鉄道で活躍する「SL大樹」(写真:鉄道チャンネル編集部)

東武で最近、ファンを熱くさせるのは、もちろん「SL大樹」。本サイトにも多くのニュースが掲載されます。

運転開始は2017年8月。SLはJR北海道から借り受け、客車はJR四国、転車台はJR西日本が提供しました。乗務員養成に協力した、SLを運行する大井川鐵道、秩父鉄道、真岡鐵道をはじめ、〝オール鉄道の力〟でプロジェクトを実現させました。

「実はこの時、各社の広報の方とネットワークができ、SLの紹介方法などについて勉強させていただきました。大樹は、鉄道を支えるベテランの職人技を知っていただくいい機会になりました」と回顧。「最近、地方圏では『鉄道で移動する』の発想が薄れつつあります。鉄道を社会に認知してもらう、存在感を高めるのも広報の役目」と、企業と社会をつなぐ広報の機能を披露しました。