「吉賀町には鉄道は通っていません」

公式ホームページにもそう記されている、鉄道のない島根県の小さな町―――吉賀町(よしかちょう)。

実は、吉賀町には鉄道の一部はある。それが……。

岩日北線という名の未成線、鉄道駅スペースはいま道の駅 温泉に

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岩日北線(がんにちきたせん)という名の未完成路線 未成線がここ吉賀町を通っている。

その名残がここ、道の駅 むいかいち 温泉 産直物産館やくろ。ここには岩日北線の六日市駅ができるはずだった。

岩日北線は、その名のとおり、山口県の山陽線 岩国駅と、島根県津和野町の山口線 日原駅(にちはらえき)を結ぶ、当時の岩日線の北側の区間で、南側の岩国~錦町は岩日線として開通。

北側の錦町~六日市も着工され、高架橋やトンネルがつくられた―――。

が、1980(昭和55)年に建設工事は凍結。島根県側の区間は、一度も列車が通ることがないまま、鉄道遺産として高架橋やトンネルが残っている。

南側の岩国~錦町の区間は、1987(昭和62)年に第3セクター化され、いまは錦川鉄道として列車が行き来している。

六日市駅ができるはずだったスペースにいま、道の駅 むいかいち 温泉 産直物産館やくろなどがあり、そこから県道16号 津和野街道を東へ800メートル、10分ほど歩くと、高津川に架かる橋から、岩日北線の単線高架道や高架橋がみえてくる。

―――温泉に入る前後に、30分ほど歩きながら、こうした岩日北線の遺構をながめる散歩時間もいい。

吉賀町には、石積みと水と稲が織りなす絶景も

道の駅 むいかいち 温泉 産直物産館やくろ から国道187号を伝って北へクルマを走らせること22km 30分。

島根県吉賀町と津和野町との境にある山あいに、石積みと水と緑が織りなす絶景がある。

それが、大井谷棚田(おおいだにたなだ)。

室町時代から江戸時代に築かれたここ大井谷棚田は、600年もの間に何度も積み直しや補修を重ね、現在は630枚の石積み田んぼが現役。

美しい石積み、水と稲が織りなす幾何学的風景―――。

ここで収穫されていた米は津和野藩主への献上米とされ、昔からとても美味しいことで知られる、大井谷棚田の米。

そんな絶景や味覚、癒やしが体感できる吉賀町へは、広島・益田から石見交通 山陰山陽 連絡バス 広益線「清流ライン高津川号」も走っているから、ゆっくり旅してみて。