常に何かのプロジェクトが進行形の渋谷。東急部分なども含む全体の完成時期は2027年度とされます(写真:土木学会 撮影・大村卓也)

4社9路線が集まり、1日330万人以上が利用するマンモスターミナル・渋谷。最近、渋谷駅を利用した方は、「ずいぶん変わったな」と感じたはずです。特に変化が目立つのがJR渋谷駅。「100年に一度」と称される大規模再開発の渦中で、駅も大きな進化を遂げつつあります。

JR東日本は、2018年5月~2023年11月に5回の線路切り換えを実施。工事前に離れていた埼京線ホームを山手線ホームに横付け、乗り換えを便利にして、線路下に平面状の通路スペースを確保しました。JR東日本東京建設プロジェクトマネジメントオフィス(東京建設PMO)や関係企業体は2024年6月14日、東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで開かれた、土木学会の定時総会にあわせて学会賞技術賞を受賞しました。学会の資料から駅の変化を時系列で追います。

受賞者代表が登壇した学会賞授与式(筆者撮影)

貨物ホーム跡地の旧埼京線ホーム

4年ほど前まで、渋谷駅の埼京線と山手線ホーム、相当離れていました。その距離約350メートル。JR東日本は線路上層の乗り換え通路で両線を結んでいましたが、所要時間は最低5分。本来はマナー違反ですが、通勤時などダッシュする人もいて改良が望まれていました。

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なぜこんなに複雑な駅構造になったのか? 初代渋谷駅は1885年、旧日本鉄道が現在地南側(恵比寿寄り)に開業、1920年に北側の現在地に移転。この時、初代駅は貨物駅になりました。貨物扱いは国鉄時代の1980年に終了、1996年に埼京線が新宿から恵比寿まで延伸されると、スペースの関係で貨物ホーム跡地に埼京線ホームが設けられました。

その後、2013年に東急東横線渋谷駅が地下に入ってJR駅隣接地に空地が生まれ、拡張可能になりました。

山手線と埼京線ホームが横並びに

渋谷駅改良に伴う線路切り換えは全部で5回。最初が2018年5月で、埼京線上り(恵比寿方面)の線路を旧東急側に移設するとともに、線路をかさ上げしました。それまでの埼京線は、山手線より一段低いところを走っていました。

2回目は2020年5月。埼京線ホームを北側に延伸して山手線ホームに近付け、同時に線路かさ上げしました。

続く2021年10月、3回目の線路切り換えでは山手線内回りの線路を移設。あわせて山手線内回りのホームを拡幅しました。

この時まで山手線渋谷駅は2面2線。といっても複線の両側にホームがある一般的な駅構造と違い、外回り、内回りそれぞれの線路の西側(山手線外側)にホームがある、少々特殊な構造でした。

4回目の線路切り換えは2023年1月。山手線外回りの線路を移設して、内回りと外回りのホームを統合。これで渋谷駅は山手、埼京のいずれも1面2線の構造になりました。

ホームを仕切って営業エリアと工事エリアを分ける

いよいよ2023年11月、5回目の線路切り換え。山手線の線路とホームをかさ上げし、線路下を平坦な通路が貫通できるようにしました。

山手線は、JR東日本で指折りの過密線区。工事間合いが確保できるのは通勤通学客が少なくなる週末、土日曜日の2日間です。上下線双方ともに2日間運休では影響が大きく、土曜日は外回り、日曜日は内回りと1日交替でそれぞれ運休。ホームは中央で仕切って、営業エリアと工事エリアを分けました。

両日は、渋谷駅の山手線停車時分を通常より1分30秒延長。ホームからの転落事故防止など、利用客の安全を確保しました。

2023年11月、5回目の線路切り替え。山手線ホームは真ん中で仕切られ、パーテーションの向こう側ではホームかさ上げなどの工事が進みます。渋谷駅は土曜日夜もかなりの混雑です(写真:土木学会)

細かいことですが、山手線渋谷駅は始発4時37分、最終0時33分(外回りの場合。土曜ダイヤ)。運転時間帯が長く、工事に取れる時間は首都圏の他線区に比べ2時間程度短くなります。

東京メトロ銀座線にもスムーズに乗り換え

以上、2018年5月から2023年11月まで足かけ6年にわたる線路切り換えで、山手線と埼京線の線路は横並びになり、線路下には東西を結ぶバリアフリー通路が整備されました。

さらに、JR渋谷駅と東京メトロ銀座線渋谷駅は同一平面にそろい、階段などアップダウンなしに乗り換えられるようになりました。

土木学会賞技術賞を受賞した、JR東日本のプロジェクト名は「渋谷駅改良(駅機能の抜本的更新と再編による利便性の向上)」。同社東京建設PMO以外では、鹿島建設・清水建設共同企業体、大成・東急建設共同企業体、鉄建・東急・東鉄建設共同企業体、交通建設東京支店、駒井ハルテック、JR東日本コンサルタンツの6者(社)が共同受賞しました。

土木学会は、「渋谷駅周辺の魅力を高め、関係事業者と連携して進める新しいまちづくりへの寄与は、単一の鉄道事業者の駅改良という以上の社会的貢献度を持つ」と高く評価しました。

虎ノ門ヒルズ駅、うめきたプロジェクト……

JR渋谷駅以外で、土木学会賞技術賞を受賞した鉄道関係プロジェクトは、「高層建築直下のシールド掘進と不飽和地盤凍結工法の開発(北大阪急行電鉄延伸)」(受賞者・北大阪急行電鉄、阪急設計コンサルタントなど)、「鉄道駅新設ホームの早期供用開始(武蔵小杉駅)」(JR東日本東京建設PMOなど)、「まちづくりと一体となった地下鉄新駅の整備(日比谷線虎ノ門ヒルズ駅)」(東京メトロなど)、「東海道線支線地下化・新駅設置(うめきたプロジェクト)」(JR西日本など)、「神奈川東部方面線(相鉄・東急直通線)の建設」(鉄道建設・運輸施設整備支援機構、相模鉄道、東急電鉄)の5件。

さらに、海外案件で「インドネシア・ジャボデベックLRT」(オリエンタルコンサルタンツグローバルなど)、「フィリピン鉄道車両基地における建設マネジメント」(清水建設)の2件が受賞しました。

スペースの関係で各プロジェクトの詳細は割愛しますが、ビジュアル的にインパクトある、うめきたプロジェクト、神奈川東部方面線、フィリピン鉄道車両基地の3件を土木学会の提供画像でご紹介したいと思います。

本サイトでも2023年1月に詳報させていただいた「うめきた新駅」。将来は新線「なにわ筋線」経由で関西国際空港と結ばれます(写真:土木学会)
相互直通運転する各社の車両が並ぶ車両基地。7社局14路線につなぐ相鉄・東急直通線の効果をビジュアル的に示します(写真:土木学会)
日本の鉄道車両基地と見間違うフィリピンの首都・マニラ近郊のLRT基地(写真:土木学会)

記事:上里夏生