コラム【鉄の余談】09 2014年3月 宗谷本線鉄道旅 ② 音威子府 駅そば「常盤軒」
※2014年3月撮影
トップ画像は、宗谷本線音威子府駅。2014年(平成26年)3月の午前5時45分。まだ夜は明けきっていません。しかし前夜の猛吹雪がウソの様な快晴。早朝から重機がガリガリと雪掻きをしていました。(その音で眼が覚めました)
前夜は音威子府駅近くの旅館に宿泊。部屋は異様に暖かいのに、布団は凍っているし、廊下とトイレは氷点下以下。水分(酒)を控えたのもあってあまり眠れませんでした。
旅館の真ん前から、音威子府駅が見えます。駅から70~80m程。
※2014年3月撮影
近いけれど、筆者は雪に慣れていないので歩き難い。
※2014年3月撮影
駅舎内に掲示されていた音威子府村のポスター。ビジュアルは、有名な駅そば「常盤軒」の黒い蕎麦。「北海道で1番小さな村」と書かれています。
※2014年3月撮影 オリジナルが縦なので加工しました
「常盤軒」は、営業時間が9:30~16:00、水曜定休でした。
※2014年3月撮影
「でした」と過去形なのは、コロナ感染症流行で2020年(令和2年)2月から「常盤軒」は長期休業。2021年2月に御店主さんが亡くなられ、閉店してしまったのです。
これが音威子府駅の時刻表です。ただし2015年(平成27年)3月に「常盤軒」の駅そばを食べるために来た時の撮影。2014年の音威子府発稚内行始発は、6:10でしたが、2015年は、6:22になっています。2025年現在、5:35、9:08、17:02の3本が普通稚内行です。
※2015年3月撮影
いずれにしても、音威子府に宿泊して稚内に行く場合、6:22、9:20発では「常盤軒」の開店前。10:58は特急なので青春18きっぷでは乗るコトができません。13:55発なら駅そばは食べられますが、稚内に着くのが2時間半後の16時半頃なので、すぐに日暮れです。
それで、2015年に「常盤軒」の駅そばを食べるためダケに音威子府駅に来ました。前日に名寄駅まで来て宿泊。名寄発7:50の稚内行で、8:52に音威子府駅に到着。稚内行は、9:20まで音威子府駅ホームに停車してから出発しす。
開店30分前なので、駅舎の天北線資料室を見学しました。
※2015年3月撮影
資料室で見た天北線に関する説明をまとめました。以下です。
1922年(大正15年)最初に開通した宗谷本線は音威子府からオホーツク海側の町・浜頓別を通って初代の稚内駅に至っていました。つまり廃止された天北線は最初の宗谷本線だったのです。
しかし1926年(大正年)に幌延を通る距離の短い天塩線が開通すると、こちらが宗谷本線に編入されて現在に至っています。宗谷本線の旧ルート(音威子府ー浜頓別ー稚内)は「北見線」として分離されました。1961年、北見線が天北線と改称されたのです。
天北線は1980年(昭和55年)の国鉄再建法が成立すると、第2次特定地方交通線に指定され、1985年(昭和60年)に廃止となりました。国鉄時代に廃止された路線としては148.9kmという最長の営業キロを誇り、優等列車(急行天北)が運行されていた状態での廃止は極めて異例でした。
1956年(昭和31年)国鉄が刊行した『最新鉄道地図普及版』(日本国有鉄道営業局編)の北海道、該当部分を拡大しました。まだ天北線以前の北見線として、音威子府駅から浜頓別経由で南稚内駅に至っています。廃線になる前の名寄本線、札沼線、羽幌線などがあって、北海道内の鉄道線の距離は現在の倍以上ありそうです。
※日本国有鉄道 1956年刊『最新鉄道地図普及版』(日本国有鉄道営業局編)の一部です
9時半近くになって「常盤軒」のおばちゃんが用意を始めました。
「常盤軒」は、1990年(平成2年)駅舎が新しくなって駅舎内に移るまでホーム上にあったそうです。真冬はさぞかし寒かったのでは・・・。
※2015年3月撮影
9時半、シャッターが開きました。
※2015年3月撮影
おばちゃんが忙しそうにそばを作り始めました。
この方の旦那様が「御店主」さんでしょうか。御店主さんのご冥福をお祈りいたします。
※2015年3月撮影
わざわざ「食べるために来た」のですから、「かけそば」(370円)と「天玉そば」(500円)を注文しました。この黒いソバは、香りが強くしっかりした麺、それに合わせる汁も出汁の効いたしっかりした風味でした。
たいへん美味しくいただきました。天ぷらは、やはりカップ麺風でしたが。(笑)
※2015年3月撮影
この日は、東京から「音威子府の常盤軒の駅そばを食べに行く」という筆者に「オレも食いたい」と飲み友達が一緒に来ていました。
さらに自動車で学生さん4人組が音威子府駅に「駅そば」を食べに来ました。総勢6人が2杯ずつソバを頼んだので時ならぬ開店ラッシュになりました。ソバが足りなくなりそうでおばちゃんは「急いでソバを持って来て」と電話していました。
ここで、2015年から2014年3月に戻ります。
6:10発の稚内行は、音威子府始発です。キハ54 513。
※2014年3月撮影
次回は、稚内に向かいます。
(文・写真) 住田至朗
※過去の写真はライター住田がプライベートで旅をした時のスナップ写真です。
※『JR路線大全 北陸・信越本線』(天夢人/2023)『国鉄の基礎知識』(創元社/2011)『停留場変遷大事典』(JTB/1998)『JR全駅・全車両基地』(週間朝日百科/60巻)他を参照しています。
※鉄道、駅などは鉄道会社、利用者の皆様のおかげで撮影させていただいています。ありがとうございました。