日本を代表する港町、横浜。その象徴であるベイエリアの臨港パークから山下公園に至る約5kmのウォーターフロントが、「世界に誇れる水際線」を目指して大きく生まれ変わります。
横浜市は9月、「(仮称)水際線まちづくりコンセプトプラン」の基本的な方向性を示しました(素案は12月頃に公表される見込み)。歩行者が快適に過ごせる空間を整備し、道路や公園などの公共空間を活用してにぎわいを生み出すことで、都心臨海部の魅力向上を図ることになります。今回は、横浜の未来像を示すこの新構想について、まちづくりコンセプトと、対象となる「5つのエリア」それぞれがどのように進化するのか、その全貌を分かりやすく紹介します。

臨港パークから山下ふ頭までが対象

山下公園

市によりますと、対象エリアは臨港パークから赤レンガ倉庫、象の鼻パーク、山下公園、山下ふ頭へと連なる一帯です。海と緑が近接する横浜らしい景観に加え、音楽アリーナや観光・商業施設が集積しており、独自の魅力を備える水際線と位置づけられています。周辺には、業務・商業・MICE施設が立地するみなとみらい地区、開港以来の歴史を伝える関内・関外地区、横浜駅周辺地区が広がり、都心臨海部全体で横浜の成長をけん引してきました。

横浜の未来を描く、まちづくりコンセプト

今回のプランは2029年度までのまちづくりの進め方を示すもので、基本的な5つのコンセプトを掲げています。市内外の来訪者に海辺の魅力を体感してもらい、回遊性を高めることが狙いです。

1 いつきても、だれときても:家族や友人、誰とでも過ごせるお気に入りの居場所を創出します。
2 わくわくに導かれて:つい歩みを進めたくなるような、移動そのものが楽しくなる仕掛けを作ります。
3 一日のはじまりから、おわりまで:朝の散策から夜景まで、一日中楽しめるコンテンツを充実させます。
4 今ここでしか味わえない体験を:イベントやライブ、スポーツが繰り広げられる躍動感あふれる日常を創出します。
5 そして、水際線からまちなかへ:水際線から横浜のまち全体へと人々を誘い、まちの魅力を満喫できる機会を創出します。

背景には、老朽化やにぎわいの低下といった課題があるとされています。山下公園通り周辺には築40年以上の施設が多く、港湾施設・倉庫・岸壁の一部で低未利用が続くとの指摘があります。来街者の滞在時間が短く、歩きにくい区間や夜間の暗さが残ることが、公共空間の魅力や快適性の不足につながっているとみられます。

横浜らしいウオーターフロントへ、各エリアはどう変わる?

各エリアの整備構想

こうした中、整備は5つのエリアの特性をいかして段階的に進める想定です。
臨港パークは広さをいかした居心地のよい緑地空間を志向し、観光客や隣接するMICE施設に訪れた人々も惹きつけるエリアへと進化させていく方針です。

ハンマーヘッド周辺は商業・客船・ホテルが近接する立地を活かし、クルーズやマルシェなど水辺ならではの体験を強化する構えです。

ハンマーヘッド周辺の整備イメージ’

赤レンガ倉庫周辺は、護岸のリニューアルや海に開いた滞在スペースの充実により、海を身近に感じられる場づくりを目指すとしています。

赤レンガ倉庫周辺の整備イメージ’

象の鼻エリアは周辺との回遊性を重視し、山下臨港線プロムナードとの接続強化や、テラス機能の更新が検討されています。

ゾウの鼻エリアの整備イメージ’

山下公園エリアは港町の景観資源を生かし、港町ならではの過ごし方ができる空間、多様な過ごし方ができる場所へと磨き上げる計画とされています。

各エリアをつなぐ照明とサイン

横断施策としては、エリア間を連続させる歩行者動線の整備、夜間景観を高める光の演出を行うとしています。
照明の整備に関しては、水面に映える光や場所の特性に応じた照明などを組み合わせ、横浜らしい夜景を高めたい考えとされています。

海に映る光、場所にあった光、特別な光で夜間景観を演出

現在地やビューポイント・近隣施設までの距離を示す「案内サイン」は、ナビゲーションや写真スポットの明示などにより、散策の楽しさと回遊性を後押しする狙いです。

周辺を含む都心臨海部で進行中の取り組み

横浜駅周辺地区、みなとみらい21地区、関内・関外地区の従来の横浜都心部に、新たに東神奈川臨海部周辺地区、山下ふ頭周辺地区を加えた横浜市「都心臨海部」では、既に複数の結節点で取り組みが進んでいます。
横浜駅周辺では商業・業務・交通ターミナル機能の強化が図られ、東口は来街者を迎えるゲートとして水際線やみなとみらいへ誘導する役割を担うとされています。
北仲通地区は関内・関外とみなとみらいの結節点として、業務・商業・宿泊・文化機能の複合的集積を推進。
関内駅周辺では「国際的な産学連携」「観光・集客」をテーマに、イノベーション拠点やエンターテインメント機能の集積、ウォーカブルな歩行者空間の形成が掲げられています。
今後は、関内・関外と山下ふ頭をつなぐ山下公園通り周辺で、水際線の象徴となるまちづくりを進める方針です。

水際線まちづくりプラン

水際線まちづくりのスケジュール

今後のスケジュール。2025年12月頃を目途に素案を取りまとめ、2026年1月頃の市民意見の募集、その後に原案の整理といった手順を踏み、コンセプトプランの策定に至る見通しです。内容は段階的に具体化される見込みで、各エリアの詳細や実施時期などは今後示される可能性があります。

横浜市が打ち出した「水際線まちづくりコンセプトプラン」は、単なるインフラ整備にとどまらず、横浜の都心臨海部全体の価値を未来へと引き上げる壮大なビジョンです。海辺の資源を磨き上げるとともに、まちとの連続性を高めることで、日中から夜間まで楽しめる水際線を実現したい考えのようです。
これから数年をかけて、私たちが愛する横浜のウォーターフロントは、さらに魅力的で、誰もが訪れたくなる場所へと進化していくことでしょう。今後具体化されていく計画に期待しながら、変わりゆく横浜の姿を見守り、楽しんでみてはいかがでしょうか。

(写真:横浜市、PIXTA)

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