今秋も登場。「ミュージアム・オブ・ザ・ムーン」

小劇場、ライブハウス、古着店……。東京を代表するサブカルの聖地が世田谷区下北沢界わいだ。小田急小田原線と京王井の頭線がクロスする交通の要衝。東京都心に比べて安価な地価を買われて1970年代以降、アーティストや個人商店主が集まった。

そんなシモキタの秋の風物詩は2022年にスタート、今年で4回目を迎えるアートイベント「ムーンアートナイト」だ。2025年は9月19日~10月5日に開催される。

小田急電鉄と下北沢商店連合会などが共催する。発想の原点は〝文化の交差点〟。多様なカルチャーやコミュニティをアートでつなぎ、大人から子どもまで楽しめる催しを用意してシモキタの秋を彩る。

今回の新機軸が「没入型エンターテインメント」。参加者が物語の世界に深く入り込んで体験を共有する、新しい形式の芸術だ。

演目は「イマーシブシアター『猫町』」(有料、土日祝日)。シモキタに暮らした詩人・萩原朔太郎をモデルに、下北沢駅前広場~世田谷代田駅をめくる。

もう一つのキーワードが「音楽」。地域で活動するアーティスト・永原真夏さんが、書き下ろしのテーマソング「ムーンライト」を制作。期間中、地域商店街で放送する。

ラストはアート作品で、ムーンアートナイトといえばズバリこれ。イベントのシンボルが巨大な月(のオブジェ)「Museum of the Moon(ミュージアム・オブ・ザ・ムーン=月の博物館)」。イギリス人アーチストのルーク・ジェラムさんが、NASA(アメリカ航空宇宙局)の月面写真から発想をふくらませた。

新登場はネコで、同じくイギリス人アーチストのネリー・ベン・ハユン=ステパニアンさんの「シュレディンガーの猫」。エルヴィン・シュレーディンガー(1887~1961)はオーストリア出身の物理学者。量子力学の「重ね合わせ」の状態をネコで説明したという背景はさておき、ネコ好きなら文句なしに楽しめそうだ。

ネコ好き必見。「シュレディンガーの猫」

鉄道関係では、普段は入場NGの東北沢駅屋上でも作品を公開。原則無料ながら、一部会場は有料になる。

記事:上里夏生

(写真:小田急電鉄)

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