JR東海は、東海道新幹線の安全を守ってきた検測専用車両「ドクターイエロー」の検測機能がすべて代替可能になる、新たな営業車検測技術を発表しました。「ドクターイエロー」はこれまで、検測専用車両として軌道や架線の検測などを実施してきましたが、今回発表された「軌道検測システム」「架線検測装置」「先頭車画像装置」の3つの技術により、営業運転中の車両での検測が可能になります。これにより、検査の効率化とさらなる安全性向上が見込まれます。

ドクターイエローの仕事を引き継ぐ3つの営業車検測技術

東海道新幹線の安全運行に欠かせない、軌道(線路)や架線といった地上設備の検査。 これまでは検測専用車両「ドクターイエロー」がその多くを担ってきましたが、JR東海が今回、3つの営業車検測技術「軌道検測システム」「架線検測装置」「先頭車画像装置」を開発。これにより、ドクターイエローのような検測専用車両を開発・製造・運用する必要がなくなり、コストダウンにもつながるとしています。

軌道検測システム

軌道検測システムの概要(JR東海)

従来のドクターイエローが軌道の形状を測る際は、床下を通したレーザ光を基準線としていました。この方式では、レーザ光を通すために車体の床面を12cmも底上げする必要があり、客室の天井高が低くなってしまうため、そのまま営業車に採用することは困難でした。そこでJR東海は、レーザ光を通さず、1つの台車に搭載した角度センサと変位センサだけで計測可能な新しいシステムを開発しました(特許出願済)。

架線検測装置

架線検測装置の概要(JR東海)

架線の検査も大きく変わります。ドクターイエローは、電気を集める集電用とは別に、測定専用のパンタグラフを搭載し、そこに複数のセンサを付けて架線の異常を確認していました。今回開発された装置では、営業車の集電用パンタグラフ付近に3台のカメラを新たに設置。撮影した画像を解析することで、測定専用パンタグラフがなくても、トロリ線の異常の予兆や架線金具の取付状態といった架線の異常を自動で検知できるようになりました。

先頭車画像装置

先頭車画像装置の概要(JR東海)

これまでは社員が全線を徒歩で巡回し、目視で行っていた検査の一部も自動化されます。 新たに営業車の運転台にカメラを設置し、画像処理技術やAI技術を活用することで、高速走行中であっても、電線類や電柱に接近する樹木や鳥の巣といった支障物を自動で検知することが可能に。この装置は国内初(特許出願済)とのことです。

「営業車検測技術開発」概要

営業車検測の全体像

JR東海は、今回発表した「軌道検測システム」「架線検測装置」「先頭車画像装置」3つの新技術と、これまでに開発してきたトロリ線の摩耗状態や高さ、ATC信号の受信レベルなどを検測する技術を合わせ、ドクターイエローで行っているすべての検測項目を営業車で代替するとしています。また、社員が目視などで行っている点検の一部も置き換えることが可能となります。
これら営業車検測技術は、2027年1月の運用開始を見込んでおり、ドクターイエローのような検測専用車両の開発・製造・運用が不要に。コストダウンも期待できます。また、営業車で検測が可能になることで、ドクターイエローと比べて検査の頻度が向上。東海道新幹線の安全性をさらに高めることができると期待されています。

「見ると幸せになれる」とも言われるドクターイエローの役割が、最新技術を搭載した営業車両に引き継がれることになりそうです。ドクターイエローを見る機会がなくなってしまうのは残念ですが、検測の頻度が上がることで、東海道新幹線の安全性がさらに高まるのは利用者にとって朗報ですね。
(TOP画像:Pixta)

鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

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