東京を走らせる力、東京メトロが長年掲げてきた「安全」への対策が、ついに一つのゴールに到達します。2026年3月28日(土)に最後の駅でのホームドアの供用が開始されることをもって、東京メトロ全9路線・全180駅においてホームドアの整備が完了することとなりました。
1991年に日本初の地下鉄ホームドアを南北線に導入して以来、35年の歳月を費やしたこの巨大プロジェクト。特に車両規格が混在する日比谷線や、ワイドドア車が走る東西線など、一筋縄ではいかない路線を抱えながらの全駅達成は、驚異的な成果と言えます。ホームからの転落事故や列車との接触事故を劇的に減少させてきたこのデジタル・インフラの完成は、これからの「東京の移動」をより確かな安心へと変えていくはずです。

最後のパズルは東西線・原木中山駅!

東京メトロ最後の設置駅となるのは、東西線の原木中山駅です。2026年3月28日の稼働開始により、全180駅のバトンがいよいよ繋がります。夜間の限られた時間に行われる搬入や設置調整など、技術者たちの目に見えない苦労が、この原木中山駅で一つの結実を迎えます。
※大規模改良工事中の東西線・南砂町駅の一部番線については、工事の進捗に合わせて今後整備される予定です。

東西線 原木中山駅のホームドア設置の様子(写真:東京メトロ)

東西線は、東京メトロの中でも最も設置が困難だった路線の一つです。その理由は、運行される車両によってドアの位置や開口幅が異なることにあります。
通常のホームドアでは対応できないこの課題を解決するため、東西線には「ハーフハイト大開口タイプ」と呼ばれる、通常のドアよりも開口部が広い特殊なホームドアが導入されました。

東西線でのホームドア設置方法

1991年からの軌跡、南北線の「壁」から始まった挑戦

東京メトロのホームドアの歴史は、1991年11月の南北線(駒込〜赤羽岩淵間)開業まで遡ります。当時は天井まで届く「フルハイトタイプ」が採用され、まさに「地下鉄の未来像」として注目を集めました。

東京メトロのホームドア設置駅数の推移グラフ

その後、2017年6月に発表された「全路線設置計画」によって整備は一気に加速 。整備率の向上とともにホームからの転落事故は目に見えて減少し、データがその有効性を証明しています。

ホーム補強と車両更新、目に見えない「執念」

「ただドアを置く」だけではないのが、鉄道インフラの難しさです。今回の全駅完了の裏側には、鉄道ファンなら唸るような、巧妙かつ大胆な「仕掛け」がありました。

ホームの「骨肉」を鍛える

ホームドアは数トンの重量があるため、既存のホームでは耐えられない場合があります。そのため、床下を鉄骨などで固める「ホーム補強工事」がほぼ全ての駅で行われました。

ホームドアの補強工事の様子、ほぼ全駅で工事が行われました

日比谷線の「大手術」

以前の日比谷線は18m車両で、3ドアと5ドアが混ざっていました 。これではホームドアの設置位置が固定できません。そこで東京メトロは東武鉄道と連携し、全ての車両を20m級・4ドアの新型車両へ総入れ替えするという、途方もないスケールの「車両統一」を行うことで、ホームドア設置への道を切り拓きました。こうした地道な車両更新と土木工事の積み重ねこそが、今日私たちが享受する「180駅の安心」の正体なのです。

日比谷線はドアの場所を全て統一化する方向性で調整

東京メトロが作り上げた「究極の安全」は、35年という長い月日をかけて作り上げられました。かつては「地下鉄のホームは危ない」と言われた時代もありましたが、2026年3月28日以降、東京の地下鉄は名実ともに新しい時代へと突入します。
これからは、ホームドアがあることが「当たり前」の風景に変わり、私たちの毎日を守り続けてくれるでしょう。
(画像:東京メトロ)

鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

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