山梨県甲州市とJR東日本八王子支社など5者は、JR中央本線・勝沼ぶどう郷駅を起点とした観光活性化の連携協定を締結しました。ぶどう畑や30以上のワイナリーが点在する「日本ワイン発祥の地」の玄関口として、2026年度中に駅待合室をリニューアルし、コーヒースタンドやワイナリー案内所を新設予定。新宿から特急で約1時間半というアクセスの良さを活かし、駅に降りた瞬間からワイン巡り(ワインツーリズム)が楽しめる「滞在拠点」へと生まれ変わる計画の全貌を紹介します。

5者連携で勝沼エリアの観光活性化へ

地域の魅力発信に向けて、地域体験コンテンツの造成やブランディングを計画

今回の連携協定は、交通、金融、地域プロデュースなどの専門性とネットワークを持つ甲州市、JR東日本八王子支社、山梨中央銀行、沿線まるごと株式会社、やまなし地域デザイン株式会社の5者が連携し、勝沼地区の観光活性化と勝沼ぶどう郷駅周辺エリアの価値向上を目指すものです。

協定における主な実施項目は以下の通りです。
・勝沼地区を起点とした甲州市内における観光および地域の魅力発信(送客、ツアー造成など)
・勝沼ぶどう郷駅建物および駅周辺遊休資産の利活用検討
・勝沼地区および甲州市内の周遊観光促進に向けた二次交通の改善検討
・地域創生ファンドの組成検討など、地方創生の新事業における新たな資金調達手段の枠組み構築

勝沼ぶどう郷駅にコーヒースタンドと案内機能が誕生

勝沼ぶどう郷駅

勝沼ぶどう郷駅は、30以上のワイナリーが集まる「日本ワイン発祥の地」勝沼の玄関口です。
JR東日本八王子支社が実施してきた「勝沼ぶどう郷駅 まちづくりワークショップ」での地域住民等からの意見を参考として、2026年度中には駅待合室にコーヒースタンドを併設地域のワイナリーを案内できる仕組みも整備する予定です。

勝沼ぶどう郷駅の管理駅である塩山駅の宇田浩章駅長

勝沼ぶどう郷駅を管理する塩山駅の宇田駅長は「勝沼ならではの価値を磨き上げながら、この駅から始まる特別な旅を届けたい」と意気込みを語っており、観光客が駅に降り立った瞬間からワインツーリズムの恩恵を受けられる拠点づくりが進められます。

通年型「ワインツーリズム(R)」で楽しむ山梨の魅力

一般社団法人ワインツーリズムが春から秋にかけて開催している周遊イベント「ワインツーリズム(R)」ではぶどう畑やワイナリーでで見学やワインのテイスティング、醸造家との交流を実施

「ワインツーリズム(R)」は、ぶどう畑やワイナリーを巡り、見学やテイスティング、醸造家との交流などを通じて地域の食や文化を五感で楽しむ、一般社団法人ワインツーリズムが開催している周遊イベント。これまでは主に春から秋にかけて開催されてきました。
今回の協定では、これを「通年型」として展開していくことを目指しています。
首都圏からのアクセスも良好なJR中央本線を利用して、季節を問わず勝沼のワインや自然景観を満喫できる環境が整いつつあります。

なぜ「勝沼ぶどう郷駅」のリニューアルが熱いのか?

実は鉄道ファンやワイン通の間で、勝沼ぶどう郷駅はすでに「聖地」として知られています。今回のリニューアルがより楽しみになる3つの背景をご紹介します。

ホームから見下ろす「甚六桜」の絶景

公園として整備されている旧勝沼駅ホームと甚六桜(画像:Pixta)

春になると、駅ホームに沿って約600本のソメイヨシノ(甚六桜)が咲き誇ります。お花見シーズンには「桜と中央線」を撮るため多くのカメラマンが訪れる名所です。

全国でも珍しい「トンネルワインカーヴ」

JR旧深沢トンネルを利用したワイン貯蔵庫「勝沼トンネルワインカーヴ」(画像:Pixta)

勝沼ぶどう郷駅から徒歩約5分の場所に、1997年まで使われていた「旧・大日影(おおひかげ)トンネル」があり、20~30分ほど歩いてトンネルを抜けると、レンガ造りの旧トンネルをそのままワイン貯蔵庫に転用した「勝沼トンネルワインカーヴ」があります。「鉄道遺産×ワイン」という全国でも珍しいロケーションは大きな魅力です。

「あずさ」「かいじ」が“臨時停車”する駅

普段は普通列車しか止まらない同駅ですが、秋のぶどうシーズン等には特急「あずさ」「かいじ」が臨時停車します。通年型の観光拠点になれば、将来的に「特急の停車本数拡大」といった鉄路のダイナミズムも期待できそうです。

通過駅から「滞在と周遊のハブ」へ進化する駅の役割

日本有数のぶどうとワインの産地として知られ、30を超えるワイナリーが集積する勝沼

これまで地方の駅は「目的地へ向かうための通過点」という側面が強く、特にワイナリーが広範囲に点在する勝沼エリアでは、駅からの二次交通が長年の課題となっていました。今回の協定で注目すべきは、沿線まるごと社や山梨中央銀行グループといった異業種が連携し、単なる駅の美装化にとどまらず、地域体験ツアーの造成や二次交通の改善、さらには地域創生ファンドの組成といった「事業実装」にまで踏み込んでいる点です。鉄道ファンにとっては、普段利用している駅が地域の魅力を発信する「目的地」へと変わっていくプロセスを体感できる絶好の機会となるでしょう。

【参考】マリオット・インターナショナルが山梨県甲州市に進出! シャトー勝沼の敷地内に新ホテルを建設、2028年春の開業を目指す(※2025年6月掲載) https://tetsudo-ch.com/13002494.html

四季折々のぶどう畑と、ホームから見渡す甲府盆地の絶景。ただそこにあるだけで心地よかった丘の上の駅が、旅人をもてなす「目的地」へ変わる2026年度。進化していく勝沼の姿を、今から少しずつ追いかけてみてはいかがでしょうか。

(画像:沿線まるごと株式会社)

鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

【関連リンク】