もしかしたら名車だったかも? な不遇の車両たちの足跡

正にタイトル通りなのですが、意外な車両も登場します。例えば、D51形蒸気機関車が不遇?

D51形蒸気機関車は1936年(昭和11年)に登場し、単機としては今も越えられていない「1115両」も製造されました。海外に向けられたものも含めれば1120両になるという、正に日本を代表するSLです。しかし、戦争に傾斜していく時代の設計は、ベースに「省資材(少ない資材で)」「省手間(限られた技術で製造が可能)」という思想があったが故に、同一機種で大量に作られたのでした。著者が言いたいのは、戦争という時代で無ければ「もっと理想を追求した、D51を超える蒸気機関車が作り得たのではないか」ということです。

国鉄最後の蒸気機関車E10も残念な鉄道車両でした。筆者は青梅鉄道公園で5つの動輪、しかも第3・4動輪がフランジレスなのを見て奇異な印象を持ったことを思い出しました。

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他にも大宮の鉄道博物館で見ることのできるEF55形電気機関車、キハ81特急形気動車、DD54形ディーゼル機関車、傑作485系特急形電車の北海道向け1500番代などが取り上げられています。

筆者にとってはローカル線の顔という印象のキハ40系気動車。グループ全体で888両が作られました。重くて鈍重ですが機関の積み替えなどで不要なまでに堅牢な車体を活かし今でも、JR北海道、JR九州、JR四国などのローカル線で活躍しています。大好きなキハ40系の写真を鉄道会社毎に列べてみましょう。”お金持ち”のJR東海にはキハ40系は残っていません。

※JR北海道

※JR東日本

※JR西日本

※JR四国

※JR九州

まだまだキハ40系の写真はいっぱいあります。

さて本書には「残念な鉄道車両」が他にも登場します。個人的には、EF200形電気機関車は見ていません。見たいな。何度も利用した253系特急形電車(成田エキスプレス)と、500系新幹線(東京〜博多を往復しました!)は好きです。

ローカル線でウンザリする程乗る701系近郊形電車。

第三セクターの車両にもなっていますね。

他にも、E751系特急形電車。

E331系通勤形電車は連接車、残念ながら未見です。フリーゲージトレインやカシオペアのE26特急形客車、試作段階で終わってしまったキハ285系特急形気動車など鉄道車両に興味のある人には読み応え十分です。贅沢を言えば、写真を別ページにまとめて、紙質を写真用にしてカラー印刷で見ることができたらもっと良かったですね。でも値段が上がっちゃうか・・・。

著者の池口さん、偶然ですが筆者と同じ年。辛口の中にも鉄道への深い愛情を感じさせる文章も魅力的です。筆者の様に鉄道に乗るのは好き、でも車両やハード面に暗い人間にはとても勉強になりました。

2017年10月10日に発行された本です。定価1700円+税。

(写真・記事/住田至朗)