木造の駅舎。一畑電車を舞台に撮影された映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」(2010年)にこの一畑口駅は重要な場面で登場しています。まずはタイトル後のオープニングで主人公の母親が乗る電車が一畑口駅に着きます。前面展望です。

母の容体が急変、動転する主人公に替わって三浦貴大さんが運転して川跡駅まで来て、線路にモノを落とした乗客にかわって拾っていた主人公、時間がかかり不審に思った三浦運転士はホームに出て運転台を離れてしまいます。この間に、以前三浦運転士が膝に乗せてブレーキとマスコンを触らせた子供が運転台に這入り込みでを動かしてしまうのです。それを乗客の高校生が携帯電話で動画撮影していたことを二人は知りません。

一畑口駅に着くと運転指導係の甲本雅裕さんが待っていて主人公は娘と甲本さんに勤務を替わってもらって病院に急ぐのです。

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そしてエンディング、主人公と妻が夫婦の会話をするシーンが一畑口駅のふだんは使われていない3番ホームに停められたデハ二52・53の前で撮影されています。

木製の改札口、シビれますね〜。残念なのは駅の外に出て駅舎を撮影していないことです。これは他の駅でも同じ。駅舎を撮ったのは電鉄出雲市駅と出雲大社駅、そして松江しんじ湖温泉駅の三箇所しかないのです。

線路の終端部、今は道路ですが1944年(昭和19年)に休止されるまで、この先3.3kmの一畑駅まで電車は運行されていました。一畑薬師(醫王山一畑寺)の階段の下に駅があったそうです。

電鉄出雲市行が先に出て行きました。右は川跡駅・電鉄出雲市駅方面。

左に進めば松江しんじ湖温泉駅方面です。正面は300mで宍道湖。

突然の乱調でやたらにピントがボケます。光量が原因ですが、もちろん撮ってる筆者の技量に大いに問題があることは言うまでもありません。

アップダウンがけっこうあります。

雲の下でまだらに陽の射す宍道湖が見えました。

湖に気を取られていて気付いたら駅でした! 一畑口駅から1.9kmで伊野灘駅。

映画“RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語”で主人公の実家近くの駅という設定で何度もスクリーンに登場しています。

中井貴一さんがこの駅のホームのベンチに一人坐って、停まって去って行く電車を見ているカットが印象的。望遠レンズ(業界用語では長ダマ)で、ちょっと暗めですが良いシーンです。あの時間に主人公は東京でのエリートサラリーマン生活に終止符を打って、子供の頃からの夢だった一畑電車運転士になることを決意したのですね。

これは復路で撮った後方展望ですが、駅がカーブと勾配で実は伊野灘駅、かなり撮り難い位置関係にあるのです。

なんだか写真のピントが合わない状態のままで松江しんじ湖温泉に向かいます。正直言って不安です。

【私鉄に乗ろう92】一畑電車 その10 に続きます。

(写真・記事/住田至朗)