東芝は、次世代の半導体パワーデバイスとして期待されるSiC-MOSFETむけに開発してきたゲート絶縁膜プロセス技術をさらに発展させ、実際の縦型デバイスに適用した結果、従来技術と比較してチャネル領域の抵抗を約40%低減することに成功。

同技術を将来的に実用化することで、自動車、鉄道、太陽光発電、エレベータをはじめさまざまな分野で利用される各種機器の電力変換器の電力損失を低減することができ、電力消費量およびCO2排出量の削減に貢献できる。

東芝は5月21日(日本時間:5月21日午後4時30分)に、同技術の詳細を上海で開催される国際学会 ISPSD(The 31st IEEE International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs)で発表する。

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高効率化、省スペース化、軽量化が求められる自動車、鉄道、太陽光発電、エレベータ等で用いられる電力変換器には、従来のシリコン(Si)より優れた材料特性を持つ炭化ケイ素(SiC)を半導体の材料とするMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)が使用されている。

現状のSiC-MOSFETでは、電流が流れる経路の一部分であるチャネル領域の抵抗が大きいため、使用時の電力損失低減の妨げに。そのため、チャネル領域の抵抗を下げるための新たな半導体プロセス技術が求められている。

東芝は、チャネル領域を形成するゲート絶縁膜プロセスとして、これまでおもにに使用されてきた酸化窒素(NO、N2O)ガスではなく、毒性がなく取り扱いが容易な窒素(N2)ガスを使用する新しいプロセス技術を開発。

ゲート絶縁膜の母材となる二酸化ケイ素(SiO2)をN2ガスで焼鈍する直前に、900度未満の低いプロセス温度で酸素に接触させる等の当社独自の処理を施すことで、反応性に乏しいN2ガスであっても窒化反応が十分にすすみ、抵抗が増大する要因だったチャネル領域周辺の欠陥が修復される。

同社のこの技術を適用することで、チャネル領域の抵抗は約40%、SiC-MOSFET全体の抵抗では従来技術と比較して約%%の低減を実現。

これにより、素子使用時の電力損失がさらに低減できるという。