鉄道とダムの「インフラツーリズム」

最終章では、南阿蘇観光未来プロジェクトの記録から、南鉄とのセットで楽しみたい観光メニューを披露します。キーワードは「インフラツーリズム」で、移動が目的の鉄道、さらには治水のためのダムを、本来の目的を離れて観光資源化する取り組みです。

南鉄の観光資源化は本稿で紹介しましたが、もう一つ阿蘇で注目したいのが2022年度完成を目指して工事が進む立野ダム。白川を適正な水量に抑える洪水調節ダムで、ダム部分が穴開きというのが視覚的にユニークな点です。阿蘇は年間降水量3000mmに達する多雨地域で立野ダムは豪雨時、白川の流水量を適正に抑えて下流の熊本市の洪水を防ぎます。

立野ダムの建設現場。写真は2年前の撮影なのでダムは影も形もありませんが、現在は建設工事が相当進んでいるはずです。

さらに、阿蘇の地形を資源化するジオツーリズムも有望。噴煙を上げる中岳の外側を周囲128kmの外輪山が囲む世界最大規模のカルデラ地形で、唯一無二の景観が楽しめます。

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南鉄などの地元が志向するのは、震災のマイナスをプラスに変えて地域を再生する「創造的復興」。阿蘇市や菊池市、高森町といった7市町村の観光事業者は、2018年4月に「阿蘇広域観光連盟」を設立。鉄道チャンネルで紹介され、本稿の最初でも取り上げた復興イラストマップは同観光連盟が制作しました。

文/写真:上里夏生