日本の自動運転は「GoA2.5」

GoA0からGoA4のレベルや乗務形態の違いを示す国交省の自動運転技術検討会の資料。(資料:国交省)

日本の自動運転を表すキーワードが「GoA2.5」です。横文字の羅列で恐縮ですが、GoAは「Grades of Automation」で自動運転のレベルを表します。国際規格ではGoA0からGoA4までの5段階(実際は6段階)に分かれ、GoA0、1=目視運転、GoA2=非自動運転、GoA2.5=半自動運転、GoA3=添乗員付き自動運転、GoA4=自動運転に区分されます。

日本のGoA2.5は、実質GoA3と同じ添乗員付き自動運転。GoA3が車両の発進・停止や加減速など運転に関係する全操作をシステムで自動化、ドア開閉だけを係員(添乗員)が担当するのに対し、GoA2.5は運転操作のうち緊急停止操作と避難誘導を添乗員が受け持ちます。

GoA2.5とGoA3は緊急時のブレーキを添乗員が掛けるか、それともシステムが自動で掛けるかだけの違いですが、やっぱり日本の鉄道は安全第一。踏切で自動車が立ち往生したり、ホームから人が転落したのを察知して機敏な対応を取れるのは人の力なんですね。

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GoA2.5は世界にない日本の独自規格で、第三者の私から見ると、一生懸命実用化しても採用するのはおそらく世界で日本だけ、例えれば、〝鉄道界のガラケー(折り畳みのガラパゴス携帯)〟のような気もします。でも2.5と3に大きな差はないようですし、細部に渡る点で安全を重視する、日本の鉄道文化を国際標準にするには必要な技術と思えます。

現在の自動運転は踏切なし、ホームドア(柵)ありが必要条件ですが、国交省は踏切のあるような地方線区への導入も構想します。(資料:国交省)

さらに、ジャーナリストの一人として思ったことを2点。一つはマスコミが自動運転を育てるのか、それとも成長を妨げるのかということです。自動車の自動運転は海外で死亡事故も起きているようで、仮に鉄道の自動運転でトラブルが起きれば新聞やテレビは、「崩れた安全神話」とか「システムを過信」とセンセーショナルに報じるでしょう。

しかし、鉄道の自動運転が今後必要な技術であるならば、社会に新技術を受け入れ育てる機運が必要。それを醸成するのが報道機関の本当の役割といえます。

鉄道でも自動車でも自動運転で社会は快適で便利になる――そうしたメリットを紹介して、社会に受け入れられる土壌を形成する。ニュースソースを提供するメーカーや鉄道事業者、さらに国や関係機関が流行の言葉でいえば「Win Winの関係」になれる、それが今求められているように思えます。

文:上里夏生

【前回記事】
ボタンを押せば電車が動く!! JR東日本が常磐線各駅停車で自動運転 ドライバレス運転の可能性を探る(前編)
https://tetsudo-ch.com/11323434.html