ボタンを押せば電車が動く!! JR東日本が常磐線各駅停車で自動運転 ドライバレス運転の可能性を探る(後編)

2021.04.03

初めての自動運転は1976年

完全無人運転第一号の神戸ポートライナー(神戸新交通ポートアイランド線)。三宮と神戸港沖合の神戸空港間10.8kmを結びます。(写真:のりえもん / PIXTA)

ここで日本の鉄道自動運転の歴史を、先述した水間特任教授の講演を基にたどってみましょう。自動運転第一号は1976年の札幌市営地下鉄東西線とされます。1976年といえば、世はロッキード事件に揺れ、プロ野球では王貞治選手がベーブ・ルースを抜く715号のホームランを打った年。鉄道界では、新幹線「こだま」に禁煙車登場なんていう出来事がありました。

地下鉄東西線の自動運転は、営業列車でなく車庫への回送時、ボタン一つ押せば自動で車庫の決められた番線に入る仕組みだったそうです。目的は運転士が乗らなくても済む省力化。札幌地下鉄はゴムタイヤ式で、鉄輪に比べ滑りが少なく、決められた位置に停車できるメリットを生かしました。

第2号は翌1977年開業の神戸市営地下鉄西神・山手線の一部区間。六甲の山並みをトンネルで駆け抜ける同線は、駅停止位置の正確性向上のため自動運転を取り入れたようです。神戸市営地下鉄は鉄レールと鉄輪ですが、対象区間がトンネル内で、雨によるスリップの可能性がないため採用されました。

偶然かもしれませんが、自動運転の1、2番バッターは両方とも地下鉄でした。

運転手が乗車しない完全無人運転の第一号は、いずれも1981年開業の神戸新交通ポートライナー、大阪メトロ南港ポートタウン線(愛称名・ニュートラム)で、一般には両線が〝無人運転のトップバッター〟とされます。1995年開業の東京のゆりかもめ(企業、路線同名)なども含めた新交通システムは、走行はゴムタイヤ、駅にはホームドアという点が共通します。

東京メトロでは丸ノ内線、千代田線、南北線などが自動運転します。(写真:彩玲 / PIXTA)

40年間大きな進歩はなし

人間なら中堅の働き盛りという長い歴史を持つ鉄道の自動運転ですが、「その後40年間、現在まで画期的な技術的進歩はなかった」というのが鉄道業界大勢の見解です。理由を教えてくれたのは、工学院大学工学部の高木亮教授。テレビコメンテーターとしてご存知の方がいらっしゃるかもしれまん。世界の鉄道界では、最初の自動運転は1984年に開業したフランスのVAL(ヴェイキュロトマティクレジェ=自動案内軌条式旅客輸送システム)というのが定説だそうです。

ちょっと待って、もう一度本稿の前の方をご覧下さい。日本ではVALより3年も前にポートライナーやニュートラムが開業しています。それが世界に知られないのは、高木教授曰く「日本が自動運転の技術開発に熱心でなく、世界への情報発信にも力を入れなかったため」。その理由を「日本の鉄道乗務員は高度な技量を持ち、当時は無人より有人の方が的確に列車運転でき、自動運転の必要性が薄かったため」と推測します。

鉄道で最も大切なのは、もちろん安全や安心。ホームからお客さんが転落したり、踏切で自動車が立ち往生した場合、自動運転の列車で機敏な対応が取れるのか。国や鉄道事業者が、おいそれと自動運転に踏み切れない理由もそこにあります。

自動運転なら増発も可能

日本は自動運転に熱心とはいえませんでしたが、技術は着実に進化しています。心臓部といえるTASC(列車定位置停止装置)の開発が進み、駅進入時にオーバーランの心配がほぼなくなりました。

無人運転と違いますが、最近増えているホームドアのある駅。列車がぴたり止まらないとお客さんが乗れません。微妙な加減速など運転機能も強化され、自動運転もベテラン運転士に比べそん色なく、列車を走らせられるようになりました。

世界の鉄道界は既に自動運転が主流です。例えば、香港の地下鉄は最短2分間隔で列車が発着しますが、多頻度ダイヤを実現できたのは自動運転だから。自動運転を上手に利用すれば省エネも可能です。

高木教授は日本の自動運転の必要性を、「人手不足に対応する省力化」に集約します。一般鉄道での完全無人運転は難しいものの、乗務員はドアの開け閉めやホーム安全確認、異常時対応に専念し、運転そのものを自動化すれば、鉄道事業者にも大きなメリットが発生します。

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