「世に出てない立体物を作ろう」と始まった「鉄コレ」が「富井電鉄」に

前述の通り、「鉄道コレクション」の展開が始まったのは2005年。当初は「立体物として世に出ていないものを作ろう」という方針で、製品化されてきた車両は昭和時代の懐かしい車両が中心。企画課長いわく、当時はNゲージサイズのローカル鉄道や小型車両が今ほど普及しておらず、かといって金属製の組み立てキットでは敷居が高い。そこで、プラスチック成型の完成品として、マイナーな車両に焦点が当てられたのこと。鉄コレ第1弾の車両には、名古屋鉄道デキ101・デキ104、いわゆる凸型機関車が収録されていました。鉄道ファンでなければそうそう聞くことのない車両だったかと思います。

また、当時からフリースタイルの電車も製品化されていましたが、その時はまだ「富井電鉄」の名は出ていませんでした。コンテンツの発展にともなって「鉄道コレクション」としても現代の車両を製品化したり、1編成の車両数が増えたりするようになりましたが、メーカーとしてもクラシック路線に戻りにくい風潮があったとのこと。そこで2016年の「凸型電気機関車」を皮切りに、「富井電鉄」の名が前に出るようになったのです。

さらにバックボーンがあった方が分かりやすいということで、本格的な路線図も一緒に考案されたそうです。Nゲージサイズの本線・港線・犬山線と、1/80ナロー(車両は80分の1スケールで、線路幅はNゲージと共通)の猫屋線・市内線が登場しています。

富井電鉄路線案内図。実在しないとはいえ本格的(画像提供:トミーテック)
左がNゲージサイズ、右がHOナロー。線路幅は同じでも大きさが違う
小林信夫氏による、富井電鉄「ノス鉄」イメージイラスト
富井電鉄猫屋線のイメージイラスト

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ちなみに、過去に富井電鉄として発売された製品の中には、それ以前に発売された製品がベースになっているものもあります。たとえば2017年に発売された「17m級大型電車A・B」は、鉄道コレクション第6弾で登場した車両がベース。色こそ違いますが、車体は岳南電車モハ1103号や松本電気鉄道(アルピコ交通)モハ103号などに共通します。

富井電鉄・17m級大型電車。設定は架空だが、車体は鉄コレ第6弾がベース

また「凸形電気機関車 貨物列車セットB」の機関車も、色は当時と異なりますが車体は鉄コレ第1弾の名古屋鉄道デキ101・デキ104機関車がモチーフ。その点では、富井電鉄シリーズは実在した車両をベースに、架空の設定を与えたフリースタイルで楽しめると考えることもできますね。