一時期地元で盛り上がった中速新幹線

ここから話題を変えて、2019年に羽越新幹線の一部沿線で盛り上がった「中速新幹線」について触れたいと思います。

本稿で取り上げたように、整備新幹線は〝順番待ち〟が半世紀も続いていて、この先も簡単に着工できそうな見通しは全くないわけです。それなら、「新幹線ほど早くなくてもいいので、時速160~200キロで走る、新幹線と在来線の間のような鉄道を早く造ってほしい」というのが発想の原点。新幹線ほど高速でないので、「中速新幹線」と通称します。

欧州などには実際、200キロ程度で走る特急列車があり、日本でも導入を目指して2019年には山形県酒田市で「鉄道高速化講演会」が開かれたりしました。資料をみると、上越妙高―秋田間(上越新幹線区間を除く)を中速新幹線規格にすることで、建設費をフル規格の5分の1程度に抑制。具体的にはフル規格の建設費は1キロ当たり100億円とも試算されますが、中速新幹線なら20億円程度に抑えられるそうです。

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車両に関しても、車両と車両の間に台車を置く、小田急ロマンスカーなどと同じ連接構造として、自動運転を採用するなど斬新なシステムの採用が提起されました。

中速新幹線を発案したのは、工学院大学の曽根悟特任教授やJR東日本出身で交通コンサルタント企業・ライトレールの阿部等社長です。発想自体は非常に良かったと思うのですが結局、今回の調査結果には反映されませんでした。

最後に余談というか雑談……

整備新幹線の着工順位は、そう簡単には決まりません。国に向けて熱心に着工を働き掛けるのは、何といっても地元選出の国会議員。そういえば、今秋には総選挙がありますよね。これ以上言及はしませんが、選挙戦では、例えば「新幹線を早期に建設します」vs「新幹線より福祉充実を」などの主張が沿線を中心に交錯したりするはずです。

文:上里夏生

※2021年7月13日14時20分……九州新幹線西九州ルートに関しまして、一部記述内容が誤解を招くものであったため、当該部分を削除いたしました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。(鉄道チャンネル編集部)