海外勢やスタートアップ企業の出展内容は

スタートアップ企業らしくシンプルな展示内容ながら、多くの来場者が訪れたKONUX Japanブース

ラストは海外勢、さらにスタートアップ企業。昨今の鉄道業界は国内、海外を問わず新興企業との協業が盛んで、私も会場で話を聞こうと思ったのですが、出展者は思ったほど多くありませんでした。

海外勢の参加見合わせは、やはりコロナの影響。スタートアップにとっては、名門企業の多い鉄道業界は若干ハードルが高いのかもしれません。

その中で私が目を留めたのは、海外企業で、おまけにスタートアップという2つの条件を満たす「KONUX(コヌックス)」というドイツ企業。昨年末の外電では、ドイツ鉄道(DB)が総額1500万ユーロ(約18億円)を投資して、分岐器(ポイント)をデジタル化するニュースが伝えられました。デジタル分岐器の半数は、コヌックスの「スマート分岐器」とのことです。

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実際のスマート分岐器は、「IIoT装置」、「クラウドサーバー」。「AI(人工知能)コア」などで構成。IIoTは若干固めの日本語訳で恐縮ですが、「製造業に特化したモノのインターネット」のこと。ボイント部に振動計やインターネット通信システムを取り付けて、列車通過時の分岐器の揺れを常時監視します。

前章で日車の状態監視技術を取り上げましたが、スマート分岐器も基本の考え方は共通です。本国ドイツのコヌックスは2014年に設立されたスタートアップ。2017年には、世界経済フォーラムで「最も将来性の高いテクノロジーパイオニア30社」の一つに選ばれています。

日本法人の「KONUX Japan(コヌックス・ジャパン)」は2020年に設立。鉄道業界には鉄道技術展2021が初お披露目となりましたが、大手事業者もスマート分岐器に注目しているようです。

2022年5月には大阪で初開催

以上で、3回にわたった鉄道技術展2021の連載コラムはおしまい。技術展会場で話を聞きながら、コラムで紹介できなかった多くの出展者の皆様にお詫び申し上げます。

本来ならここで「次は2年後の鉄道技術展」と書くところですが、2022年5月25~27日には大阪市住之江区のインテックス大阪で「鉄道技術展・大阪2022」が開かれます。JR西日本、大阪メトロ、近鉄、南海電鉄、京阪電鉄、阪急電鉄、阪神電鉄と関西の鉄道主要7社が特別協力する、関西エリア初開催の技術展に乞うご期待。

経路検索大手のジョルダンは、今回の鉄道技術展2021に初出展。力を入れる「乗換案内」、「マルチモーダル」、「モバイルチケット」といった、鉄道のICT(情報通信技術)化を加速させる新サービスを情報発信しました
ビジュアル的に注目度ナンバーワンなのはずばりこれ。ニコン発のスタートアップのニコン・トリンプルは、四足歩行ロボットの「Spot(スポット)」を公開しました。アメリカのメーカーが開発した自律型ロボットの日本バージョンで、見た目は警備用と思えますが、実際はトンネルなど鉄道施設の検査が目的とか(背中に乗っているのが測定機です)

記事:上里夏生(写真は全て筆者撮影)