竹本銚電社長(中央)を囲むJALスカイのスタッフと銚電の応援隊(筆者撮影)

2022年の年明けとともに、コロナ禍が再来しました。変異ウイルスのオミクロン株。感染者数の爆発的増加が止まらず、観光・旅行、さらには鉄道・交通業界からも再び悲鳴が聞こえはじめました。こんな時こそ少しでも前向きになれる話題をと、思い立ったのが鉄道事業者によるコラボレーションのテーマ。

鉄道は沿線の人たちには、それこそ「乗ったことはなくても名前は知っている存在」ですが、一方で全国的な知名度となるとJRグループや大手私鉄を除けば、若干の疑問符がつきます。そこで各社は、同業の鉄道会社はもちろん、異業種のメーカーやエンタメ企業と積極的に手を結び、沿線外での認知度向上、販路拡大につとめます。今回は「コラボ」を共通のキーワードに、興味を持っていただけそうな情報を集めました。

空港で大規模販売会(銚子電鉄)

最初は本コラムの常連といえる、千葉県の銚子電気鉄道(銚電)。銚電は2021年には新潟県のえちごトキめき鉄道、岐阜県の長良川鉄道と姉妹鉄道の縁組みを結びました。

2022年にはLCC(格安航空会社)のスプリング・ジャパンと連携し、新千歳、広島、佐賀の3空港発の成田線搭乗客に銚電の硬券乗車券を進呈しました。

ここで紹介するのは、日本航空(JAL)とのコラボ。成田空港のJAL施設で2022年1月17、19、20の3日間、ぬれ煎餅やまずい棒といった銚電オリジナル商品の大規模販売会を開きました。最初にお断りすれば、スプリング・ジャパンはJAL系の航空会社ですが、販売会と直接の関係はありません。空港での催しは、成田、羽田の両空港でJALの地上業務を一部受託するJALスカイ(企業名)が、銚電と共同で発案しました。

銚電竹本社長の〝自虐講演〟がコラボ生む

まずは販売会のきっかけ。銚電の竹本勝紀社長の講演を、JALスカイの部長が聞いたことで、航空と鉄道につながりが生まれました。JALスカイは銚電に、同じ千葉県内の成田空港でのイベントを提案しました。

本サイトでも紹介させていただきましたが、竹本社長はなかなか話し上手。「電車屋なのに自転車操業」とか「まずい棒、まずいのは経営状況です(涙)」など、秀逸な自虐コメントを繰り出して聞く人の心をわしづかみします。そして話の最後では、「2023年に当社は創業100年。これからもずっと電車を走らせたい」と語りかけます。

空と陸、フィールドは違っても、コロナで大きな影響を受ける点は共通。竹本社長の熱い話に共感したJALスカイは、地域貢献策の一環として、銚電にエールを送ることにしました。

JALスカイの企画チームは、実際に銚子を訪れ電車にも乗車。鉄道が地域に果たす役割や課題を理解した上で、銚電と話し合いを重ねました。銚電はぎりぎりの社員数で鉄道を運行するため、空港販売会に社員を派遣するのは不可能。会場には竹本社長と柏木亮常務だけが出向き、銚電を応援する和泉大介さんと望月瑛司さん(銚子市地域おこし協力隊)が販売を担当。レジはJALスカイ社員が、ボランティアでかってでました。

JALと銚電がWinWin

会場はJALスカイ会議室。ぬれ煎餅などのオリジナル商品に加え、江戸時代から伝わる伝統工芸織物の銚子ちぢみなども販売しました。購入者にはオリジナル銚電1日乗車券がプレゼントされました。

取材に応じた竹本社長は、コロナで厳しさを増すJALグループの経営状況も理解したうえで、「電車にJALの装飾を施すなど、銚電にもJALにもメリットが生じるWinWinの利用促進策を考えたい」と発言。

千葉県の行政や観光業界は、成田空港に降り立った外国人旅行者が地元を素通りして東京に向かってしまうことを課題視しており、竹本社長は「関係機関の力を合わせながら、成田、佐原、銚子のトライアングル観光ルートを形成したい」の考えを明かしました。

スプリング・ジャパンの成田線機内で銚電の1日乗車券やぬれ煎餅の試供品を配る客室乗務員(写真:銚子電気鉄道)