県都・松江と出雲大社を結ぶ「ばたでん」

宍道湖畔を走る1000系電車。東急電鉄では東京メトロ日比谷線乗り入れにも使用された1000系電車が2014年、一畑電車に仲間入りしました。東急時代の中間車に運転席を取り付けて先頭車化したため、タネ車とは大きく印象が変わっています(画像:一畑電車、島根県観光連盟)

続いては、島根県の地方鉄道・一畑電車(通称「ばたでん」)。記憶をたどれば、私がばたでんに乗車したのは2014年8月。現在も続く「全国高校生地方鉄道交流会」が出雲で開かれ、現地取材しました。

一畑電車は、1912年設立の一畑軽便鉄道がルーツ。2022年は110周年です。1914年に出雲今市―雲州平田間が開業、1925年には一畑電気鉄道に社名変更し、1927年に電化されました。社名は一畑薬師に由来。眼病に霊験あらたかな〝目のお薬師さま〟として、古くから信仰を集めます。

路線は松江、出雲の両市にまたがり、北松江線(松江しんじ湖温泉―電鉄出雲市間)、大社線(出雲大社前―川跡間)の2路線。営業キロは42.2キロあります。山陰エリアでは第三セクターを除き唯一の民営鉄道で、2006年には一畑電気鉄道を持ち株会社として事業部門ごとに分社化。鉄道事業者では珍しい、「電車」の社名を名乗るようになったのはそれ以来です。

昭和初期生まれ、日本最古級の電車が映画の主役

一畑電車の歩みを物語る人気車両・デハニ50形電車。一畑オリジナル車両で、デハニ52とデハニ53の2両あります。2009年に営業運転を終了。1両は出雲大社駅で展示、もう1両は雲州平田駅構内で一般向け体験運転に使用されます(画像:一畑電車、島根県観光連盟)

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最近、力を入れるのが観光鉄道としての利用促進で、きっかけは2010年公開の映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」。エリートサラリーマンの道を捨て故郷で電車運転士になった男性が主人公で、スクリーンに登場する1928年製のデハニ50形電車は、主演の中井貴一さんとともに、もう1人の主役と呼ばれました。

一畑ラストは、とあるセミナーで耳にしたこぼれ話のクイズ。映画公開後、一畑にクレームの電話がかかってきました。「資格のない中井さんに電車を運転させた」。もちろん本当に運転してはいません。CGでもありません。では、どうやって撮影したのか。鉄道好きな皆さんなら分かるはず。映画はダウンロードでも鑑賞できるようなので、よろしければ考えてみてください。