「東京に一番近いSL」

2022年のSL「バレオエクスプレス」は、3月19日から12月4日までの土・日曜日と祝日中心に合計101日間、熊谷―三峰口間で運行されるスケジュールです(写真:秩父鉄道)

秩父鉄道が観光鉄道にシフトするきっかけをつくったのが、1988年に運転を始めたSL「パレオエクスプレス」です。キャッチフレーズは「東京から一番近いSL」。先頭に立つC58 363は戦時中の1944年に製造され、国鉄時代は山田線や石巻線といった東北地方を主に走りました。

1972年に引退。廃車後は埼玉県の吹上小学校に静態保存されていましたが、1988年のさいたま博覧会の目玉として復活。秩父鉄道での復活後の運転期間は、既に国鉄時代を上回っています。

パレオエクスプレスとともに、秩父鉄道の観光事業を象徴するのが〝天下の景勝地〟の異名を持つ「長瀞」。荒川の急流を下る「長瀞ラインくだり」は秩父鉄道が、梅の名所として名高い寳登山神社へのアクセス「宝登山ロープウェイ」はグループ会社が運営します。

大型ショッピングモールの最寄り駅

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秩父鉄道の近未来を象徴するのが、2018年10月に開業した新駅「ふかや花園駅」です。駅直近には深谷市の地域再開発事業で、大型ショッピングモール開業が予定されます。埼玉県北・秩父エリアの観光物産施設開設の話もあります。

鉄道ファンを意識した企画も盛んで、「タブレット授受再現撮影会」「SL乗車とSL出区点検見学ツアー」「第4回秩父鉄道プロが教えるダイヤ作成教室」といったプログラムが並びます(既に締め切った企画もあります。詳細は同社ホームページで確認を)。鉄道ファンにも一般観光客にも魅力いっぱいの秩父鉄道。この春休み、PASMO片手に沿線を訪れてみてはいかがでしょうか。

秩父鉄道往年の名車① 自社発注で1959年にデビューした300系電車。スタイルは当時流行していた前面2枚窓のいわゆる湘南型。当初は2両編成、のちに中間車を新造して3両編成で運用されましたが、1997年に全車廃車になりました(写真:秩父鉄道)
秩父鉄道往年の名車② 国鉄101系電車を譲受して1986年から2014年まで運用された1000系電車。JRでの運用終了後も秩父鉄道では現役で、多くの鉄道ファンにシャッターチャンスを提供しました(写真:秩父鉄道)

記事:上里夏生