ここは和歌山県白浜町、海辺を行く紀勢線の駅―――白浜。

画像は車止めがある0番線にとまる283系オーシャンアロー。あと15分で新大阪へむけて発とうとしている特急くろしお20号。

この特急くろしお20号で新大阪へ出て東京へ帰るという、月2回の仕事の最終日。

いつもどおり、和歌山の海が映る左車窓の席をおさえて乗り込み、ノートPCを出して缶ビールを開けて、海をみながら振り子制御をお尻で感じて紀勢線を北上。

海辺のきらきらした区間が終わると、283系オーシャンアローは白浜出発から1時間半で和歌山駅1番のりばにつける。

ここで「特急くろしお20号で戻る最後の日」に記念すべき!? いいシーンに出会った。

特急くろしお20号は、和歌山で2分停車する。この2分の間に、ホームにある売店へと急ぐ客が、いつもだいたい2~3人はいる。

そのうちのひとり。売店の目の前にとまる車両を把握し、ホームにつく前にその車両に移動。ドアが開いてすぐに売店へむかう。

レジの前に、60代のスーツを着た男性客が、ちょっと会計に時間がかかった。駅員が発車メロディを鳴らそうとしている。

缶ビール2本を持つこちらをみて、その男性客が、「ごめんな。じゃあこれもいっしょに」とこちらの缶ビールをすっと手にして、「ぜんぶICOCAでな」と。

「あ、すみません。じゃああとでお金を」「ええよええよ」

発車メロディが鳴り、難なく再び乗車。

「そんなわけにいきませんから! 頼みます」「なんか悪いな。400円、ええ?」「いえいえいえ、ちゃんと……」

動き出した車内、デッキでそんなやりとりをする中年男ふたり。

―――白浜での最後の仕事の帰り、特急くろしお20号。人との出会いにちょっとだけ幸を感じ、283系オーシャンアローは淡々と新大阪をめざして。

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