「北海道新幹線やサンライズに乗りました」

何組かの親子に話を聞きました。新幹線Tシャツを着て、列車をプリントしたリュックサックを背負った男の子。今年、小学校に入学したので、お父さん、お母さんと、はじめての鉄道イベントに参加したそうです。

「北海道新幹線に乗ったし、最近は寝台列車の『サンライズ』にも乗った(『瀬戸』か『出雲』かは聞き忘れました)。愛読書は『JR時刻表』。時刻表に出ているいろんな列車に乗ってみたい」

東京都江東区在住で、関鉄のイベントはネットニュースで見つけたそう。私の腕章を見て、「サイト、いつも見てます」とお父さん。「ありがとうございます」と私。ご両親に、いろんな列車に乗せてもらってうらやましい。お子さんへの愛情が伝わります。

「減速時に速度計を見忘れた」

もう一人、千代田線(東京メトロ)のTシャツを着た子にも話を聞きましょう。千葉県我孫子市からお父さんと一緒に参加した小学4年生です。運転士体験を終えて、「減速時に速度計を見忘れた」と何だかくやしそう。

ここで若干の解説。本物の運転士は停車時、速度計を確認しながら減速します。でも関鉄はエンジニア体験で、参加者にそんな細かい点まで教えません。どうやら自分で勉強したようです。

お父さんに話を聞くと、「運転シミュレーションゲームで知ったようです」と、コアな鉄道ファンも顔負けの知識。今、乗ってみたい列車は、本サイトでも紹介された「伯備線に復活した、国鉄色の特急381系『やくも』です」と話してくれました。

空気ブレーキ車両をピタリ定位置に停める職人技

今回の鉄道エンジニア体験もそうですが、関鉄イベントの一番人気は気動車運転体験。前にも書きましたが100回以上参加したファンもいます。その理由、関鉄担当者の話では車両のブレーキシステムにあるようです。

関鉄の気動車には、旧型の空気ブレーキと新型の電気ブレーキが混在します(今回の体験運転で使用したキハ2300形は電気ブレーキです)。実はコアな鉄道ファンには、空気ブレーキが人気。

季節や天候、車両の調子でブレーキの利きが変わるので、素早く見極めて目標にピタリと止める。そこが、鉄道車両運転のだいご味。運転体験にリピーター続出の理由です。

人力による保線作業で鉄道の安全守る

参加した子どもが線路の突きかためを体験。人力による保線作業が鉄道の安全を守ることを学びます

スペースの関係で詳細は割愛しますが、軌道整備や軌道自転車の体験も興味深いものでした。大手の鉄道会社はマルチプルタイタンパー(マルタイ)と呼ばれる大型の保線機械で軌道整備しますが、関鉄は人力による保線作業が主流です。

終電運行後、限られた時間の作業で安全を守る。こうした鉄道の現場を知ることで、鉄道の知識や興味も増すはず。「関鉄の『親子で鉄道エンジニア体験』は、鉄道ファンのすそ野を広げる活動」、そんな思いを抱いて。会場をあとにしました。

イベント参加者は集合場所の守谷駅から水海道車両基地まで、特製ヘッドマークを付けた専用列車で移動します。車両は2000~2002年に10両導入されたキハ2300形通勤型気動車。特製ヘッドマークをつけ、運転体験にもそのまま使用します

記事:上里夏生