土木学会賞は表彰者が多数に上るため、表彰状を代表者に手渡した後、技術賞受賞者全員で記念撮影します。前列左から3人目が谷口博昭学会会長です(同日の総会で退任)

今回は鉄道プロジェクトの学会表彰を取り上げます。土木学会は2022年6月10日、東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで「令和3年度土木学会賞」の表彰セレモニーを開催しました。

注目の技術賞は全部で26件。鉄道関係の受賞は、「急曲線ホーム解消による安全性向上・飯田橋駅ホーム移設」「生産性向上と工期短縮を実現した北陸新幹線福井高架橋」「官民協力による統合的災害復旧・箱根登山鉄道早期復活」「東京2020大会成功に向けた安全・安心で快適な旅客駅整備」「シンガポール地下鉄長距離シールドトンネル工事」の5件です(タイトルは適宜簡略化しました)。

学会賞の対象は2020年1月~2021年12月に完成または新技術を適用した施設や事業。これらを専門家が審査し、ました。ここでは鉄道ファンの視点で、各プロジェクトのポイントをご報告します。

急カーブ区間のホームを移す・JR東日本

移設前(左)と移設後(右)の飯田橋駅新旧ホーム対比(画像:土木学会)

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JR飯田橋駅のホーム移設は、2020年7月施工。技術賞はJR東日本東京工事事務所(東工所)、鉄建建設・前田建設共同企業体、東鉄工業東京線路支店東京軌道工事所、JR東日本コンサルタンツの4者が共同受賞しました。

近隣にオフィスや大学も多い、飯田橋を利用経験のある方はご存じでしょうが、移設前のホームは半径300メートルの急カーブ区間。列車とホームの間には、最大33センチものすき間が開いていました。旧ホームはすき間のほか、列車がカーブの内側に傾いて停車するため、ホームと車両に最大20センチの段差がありました。

すき間は15センチに、段差はほぼ解消

JR東日本は飯田橋駅ホームを210メートル市ヶ谷寄りに移設するほか、西口駅舎の建て替えを公表。ホーム移設で、すき間は最大15センチ、段差は同じく5センチ前後まで縮小しました。

ホーム移設で問題になったのが、新ホーム部分に発生する急こう配です。飯田橋駅ホーム移設先の一部は国指定の史跡区域「江戸城外堀跡」となっており、急曲線区間を回避しつつ史跡への影響を最小限にとどめようとすると、ホーム移設先の一部に33.3パーミル(1000メートルで33.3メートルの高低差)の縦断こう配が発生します。

そこで、移設先のホームや線路の地盤を最大50センチ程度掘り下げ、こう配を最大18.5パーミルに緩和しました。JR東日本によると、列車運行しながらの路盤掘り下げは前例がないそう。東工所は、1年以上前から周到に準備。飯田橋駅を通勤や通学でご利用の方は、日々の変化を感じていたかもしれません。

線路の路盤掘り下げには、保線用の道床掘削機を改造した機材を使用。線路とマクラギを固定した状態のまま進めました(画像:土木学会)