「財源確保は関係機関との調整を丁寧に」(斉藤国交相)

こうした状況を、国や北海道はどうみるのでしょう。斉藤鉄夫国土交通大臣は報告書公表後、2022年12月9日の会見で、北海道新幹線の事業費増加と開業遅延について、「財源に関しては、関係機関との調整を丁寧に進めたい。国交省としては引き続き、関係者の皆さんと協力をしながら、新幹線の着実な整備に努めていく」と発言しています。

さらに、上原淳鉄道局長が北海道庁を訪れて、報告書内容を鈴木直道知事に説明。鈴木知事は「できる限り地方負担を軽減してほしい」と述べ、事業費増加に伴う地方負担の増加に警戒感を示しました。

道庁での会合に同席した札幌市の秋元克広市長は、「2030年度末開業に向けて沿線では街づくりが進んでいる。当初予定から極力ずれ込まないよう検討してほしい」と要請しました。

北海道新幹線の到着を待つ道都の表玄関・JR札幌駅。新幹線開業はまだ先ですが、構内店舗の一部配置換えなど既に準備は始まっています(写真:まちゃー / PIXTA)

現時点で確定的な工期を見通すのは困難

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国交省の有識者会議は、今後の対応策を大要次の4点に集約しました。

1、事業費は、コスト縮減やリスク発生の抑制に努めつつ、継続的なモニタリングを実施する。
2、事業を円滑に進めるため、建設主体のJRTTばかりでなく、国交省鉄道局、北海道をはじめとする関係自治体、JR北海道などの関係機関は共通認識を持って取り組む。
3、関係機関が緊密に情報共有し、相互協力体制を構築する。
4、工事進行に応じたタイミングで必要な見直しを適切に行う。

具体的には、一部トンネル工区で一方向からの掘削に代えて双方向からの同時掘削で工期を短縮するなど工法を工夫。開業時期に関しては、開業予定の2030年度末までにまだ8年あって不確定要素も多いことから、「現時点で確定的な工期を見通すのは難しい」の判断に至りました。

北海道新幹線の建設コスト縮減事例。防音壁かさ上げ区間を見直して、きめ細かくコストを縮減します(資料:国土交通省)