JR豊肥線からの熊本空港アクセス鉄道の分岐駅・肥後大津に並ぶ別府行き「九州横断特急」(右)と、折り返しの熊本行き普通列車(中央)。左は2023年7月15日の南阿蘇鉄道(南鉄)の全線運転再開にあわせて肥後大津に乗り入れる南鉄の試運転列車

熊本鉄道紀行の後編は、熊本空港(愛称名・阿蘇くまもと空港)への鉄道アクセスの〝先行体験記(?)〟です。空港(熊本県益城町)と県都・熊本市を直結する「熊本空港アクセス鉄道」をめぐっては、JR九州と熊本県が2022年11月、JR豊肥線肥後大津駅から空港に分岐する新線ルートを採用することで合意。本サイトでも、2023年1月に紹介させていただきました。(※記事タイトル「イチから分かる「熊本空港アクセス鉄道」 肥後大津ルートでJR九州と熊本県が確認書【コラム】」2023年1月28日掲載)

アクセス鉄道の着工と開業時期について、県は2023年3月、「2026年度中に着工、2034年度末に開業」のスケジュールを示しています。予定通りでも開業まで10年以上ありますが、実はその多くは今でも体験できます。今回は東京(成田)への帰路、熊本駅→JR豊肥線→肥後大津駅→空港ライナー(ジャンボタクシー)→阿蘇くまもと空港のルートで、アクセス鉄道を実体験しました。

開業は12年後!?

まずは前回コラムをおさらい。熊本県は空港アクセスの改善策を検討する中で、JR豊肥線の既存駅から空港までの鉄道新線を建設する、「JR豊肥線の延伸」を選択しました。

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空港への分岐駅は熊本側から、三里木、原水、肥後大津の3案が考えられるところ、もっとも利便性の高い肥後大津が最適と判断。JR九州との間で肥後大津ルートで合意し、確認書を交わしました。

JR豊肥線と熊本空港アクセス鉄道のルート。熊本駅から空港まではほぼL字形を描きます(資料:熊本県)

熊本県は空港アクセス改善について、有識者とJR九州、九州産交バスなどで構成する、「熊本空港アクセス検討委員会」で協議してきましたが、2023年3月の会合で大まかなスケジュールを示しました。

それによると、今後3年間で概略設計と環境アセスメントを行い2026年度に着工。工期およそ8年で、2034年度末(実際は2035年春と思われます)に開業としました。

鉄道とタクシーを乗り継いで空港へ

熊本空港アクセス鉄道に乗車できるのは早くても12年後のようですが、現在もこれに近いルートを先行体験することはできます。それが鉄道とタクシーを乗り継ぐ、「熊本空港ライナールート」です。

熊本市内から空港にアクセスする場合、熊本駅から肥後大津駅までJR豊肥線に乗車。肥後大津と空港を結ぶ新線の熊本空港アクセス鉄道部分は、道路交通が肩代わりします。熊本空港ライナーは、肥後大津から空港へのタクシーの愛称名。2011年からの試験運行を経て、2017年には本格運行に移行しました。

空港ライナー、その実態はジャンボタクシーです(運びきれない場合など、状況に応じて小型タクシーが使用される場合もあります)。ドライバーを含め10人乗り。運転は地元のタクシー会社が交代で受け持ち、経費は行政や関係機関が共同負担します。季節によって多少の違いはあるようですが、肥後大津発空港行きは6~19時台におおむね30分に1本のダイヤです(熊本空港発は到着便に合わせて21時台まで設定)。

熊本県は、空港ライナーに空港アクセス鉄道の先行投資的な意味合いを持たせます。何より運賃無料というのが、利用客にとってのおすすめポイントといえるでしょう。

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