相鉄・東急直通線の新工法から7月全線復旧の南鉄の絶景橋りょうまで プロが選ぶ優秀な鉄道プロジェクトは【コラム】
南阿蘇鉄道の絶景橋りょう7年ぶりによみがえる
九州2件目は、鉄道の復活プロジェクトです。2016年の熊本地震で被災した熊本県の第三セクター・南阿蘇鉄道(南鉄)は2023年7月15日に全線で運転再開しますが、南鉄のシンボルが立野ー長陽間の「第一白川橋りょう」。全長166.3メートルで、下を流れる白川の水面からレールまでの高さは約60メートルあります。
第一白川橋りょうは戦前の1927年に架橋されましたが、熊本地震で橋台や橋脚が損傷。南鉄とJRTTなどによる復旧工事では、補強材で強度をアップしつつ、旧橋の形状やサイズ、色などは地震以前の姿を維持して、多くの鉄道ファンを魅了した橋りょうを見事によみがえらせました。
被災前の第一白川橋りょうは、土木学会の選奨土木遺産に選定。学会賞では、橋りょう技術者として名を残す、故田中豊博士を顕彰する田中賞の作品部門に選定されました。
日本一のマンモス駅の東西をつなぐ自由通路

ラストは、JR、私鉄を合わせて1日350万人以上が利用する日本一のマンモス駅・新宿駅で2020年に完成したプロジェクト。「新宿駅東西自由通路整備」で、JR東日本と新宿区などが技術賞を受賞しました。
新宿駅の東口と西口は約300メートルも離れていて、自由通路完成まで、東西の往来には入場券を購入するか、いったん駅の外に出て移動する必要がありました。
東西自由通路は、駅改札内の通路を拡幅。改札口なども移設して。自由に通行できるようにするプロジェクトです。
工事に当たっては、階段を閉鎖しないように通路を切り替えつつ、24時間利用可能な工事用トンネルも用意。線路内作業は終電後の限られた時間で行うといった周到な準備や工程・工法の工夫で、新宿区や関係鉄道各社が目指す「新宿駅グランドターミナル構想」を一歩実現に近付けました。
日本最古の鉄道トンネルが選奨土木遺産に
このほか今回は、JRTT北陸新幹線建設局と鉄道総研の「北陸新幹線斜杭基礎ラーメン高架橋」、JR東日本などの「浜松町駅の線路切り替え」、JRTTと東急電鉄の「相鉄・東急直通線日吉駅付近アンダーピニング工法」の3件が、それぞれ技術賞を受賞しました。
また、現役最古の鉄道トンネルとされるJR東海道線横浜ー戸塚間の「清水谷戸トンネル」と、上り線が1903年、下り線が1922年に架橋され、この間の技術進歩がうかがえる南海本線の「紀ノ川橋りょう」が、選奨土木遺産に選定されました。
さらに、東急建設が企画・制作した上田電鉄別所線の千曲川橋りょうの災害復旧を記録した映画「繋げる~赤い鉄橋を蘇らせた工事の記録~」が、学会映画コンクールで部門賞(一般部門)を受賞しました。

記事:上里夏生