いよいよ夏休み、青春18きっぷの鉄道旅時間がやってきた。

ここは島根県出雲市。山陰線 出雲市駅から西へ4km。1990年まで列車が行き来していた大社線の跡を歩いている。

その名のとおり、出雲大社へと行く廃線跡

1912(明治45)年に開業した大社線は、非電化の単線線路で、出雲高松駅、荒茅(あらかや)駅と2つの途中駅を経て、出雲市駅と大社駅の間、7.5 kmを結んでいた。

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開業当時は蒸気機関車けん引客車列車、1990(平成2)年の廃止まではキハ40などのディーゼルカーたちが行き来し、京都や大阪から出雲大社への参詣列車 急行だいせんや急行大社といった直通列車も走っていた。

ここは出雲高松駅。駅近くの交差点にも「高松駅前橋」という名板がある。

その手前には、赤川に架かる鉄橋の跡も。青空と野山、線路跡、さやさやとおだやかな風になびく草花の音、鳥のさえずり……。

心地いい廃線跡の風景のなかにいると、なんだかすーっと無になる気分。

出雲高松駅、石積みとレンガのホーム

出雲高松駅は、1面2線構造で、赤川方の線路がアスファルト化され、地元の高校生たちの通学路に。すれ違うときに「こんにちは」と声をかけてくれる。

大社側は大きな四角い石積み。出雲市側は低いレンガと厚いコンクリートが敷かれ、四角い石積みのほうが先にできて、出雲市側にホームを延長したのかも……とか想いながら、ぼーっと立つ。

線路空間を抜ける風が、気持ちいい。

荒茅(あらかや)駅で、急行だいせん・急行大社の姿を想う

砂丘ブドウの産地で、大社駅のひとつ手前、荒茅(あらかや)駅は、1面1線構造。

ホームの大社寄りには、「自衛隊前踏切」と記された制御機器箱が残っている。この駅のすぐ東側に、陸上自衛隊 出雲駐屯地がいまもある。

―――この大社線にはかつて、急行 だいせん や 大社 が行き来していた時代があった。

いまでは信じられない、ロマンある走行区間に、胸アツになる。

急行 大社 は所要時間10時間超えの昼行、だいせん は昼夜2本

急行 大社 は名古屋~大社を、急行 だいせん は大阪~大社を結んでいた。

1974年の時刻表をみると、急行 大社(401D)は、「名古屋発910 金沢発920」と記されている。

そう。金沢発は小浜線・宮津線を経由し、山陰線を併結で走り米子どまり。

名古屋発の急行 大社 は、あさ9時10分に発ち、6時間後に豊岡や城崎をとまり、米子に18時38分着、出雲市に19時42分着、出雲市から大社線は普通列車421Dとして走り、終点の大社には19時56分についた。

その所要時間、なんと10時間46分。急行 だいせん はこの時代、大阪をよる21時台に出る夜行と、あさ9時台に発つ昼行の2本が走っていた。

―――そんなロマンあふれる急行列車が走っていた時代を想いながら、おだやかな風がそよぐ大社線の廃線跡を、ゆっくり歩いてみて。

もう少し行くと、観光客でにぎわう大社駅跡、その先には出雲大社があるから。

◆出雲観光ガイド 大社駅 解説
https://www.izumo-kankou.gr.jp/4609

◆しまね観光ナビ 島根県公式観光情報サイト
https://www.kankou-shimane.com/