名古屋から奈良へ一直線 JR関西線で今秋、18年ぶりの「直通列車」実証運行へ 三重県とJR西日本などが調整【コラム】
東海道線vs関西鉄道の仁義なき戦い
ここで関西線略史。江戸時代、尾張から上方(京都、奈良)へは、美濃路、鈴鹿越え、伊賀越えの3ルートありました。東海道線(東海道新幹線も)は岐阜経由の美濃路を採用。伊賀越えが関西線です。
私鉄の関西鉄道は、1899年までに名古屋ー奈良間を全通させました。私鉄ながら官営の東海道線に対抗。動輪径の大きなSLで所要時間を短縮したり、「運賃半額」の極端な割引で乗客の獲得に努めました。
官の東海道線vs関西鉄道の〝仁義なき戦い〟は、関西鉄道が国有化された1907年まで続きました。戦後も国鉄は、1955年に気動車準急を全国に先駆けて導入するなど(※)、線区近代化に力を入れました。
※東海道線のバイパスの御殿場線にも同時期に小田急・国鉄を直通運転する気動車準急が投入されています。
短命に終わった特急「あすか」
関西線で、ベテランファンの記憶に残るのが国鉄特急「あすか」かも。名古屋ー東和歌山間を関西、阪和貨物、阪和の3線経由で結びましたが利用は伸びず、1965年3月に登場、1967年10月に廃止と、わずか2年半の短命で姿を消しました。
路線がほぼ並行する近鉄には、どうやってもかなわなかったのです。
手元にある2004年の時刻表を見ると、名古屋ー奈良間を直通するのは1日1往復の気動車急行「かすが」だけ。同列車は2006年3月のダイヤ改正で運行終了しました。
余談を一つ。鉄道史に詳しい人たちの間では、「もし関西鉄道が国有化されず私鉄のまま残ったら、現在のように名阪間を直結する近鉄はなかった」が定説。今秋の臨時列車に乗車して、明治の関西鉄道に思いをはせるのも一興かもしれません。
ところで、近未来に名古屋ー三重ー奈良ー大阪を結ぶ高速鉄道は? そうです、リニア中央新幹線。リニアの三重県駅(仮称)は亀山市内に設けられる計画があります。関西線は、リニアの二次交通として発展可能性を持つ路線ともいえます。

日本の原風景が広がる亀山ー加茂間
ラストは、名古屋―奈良間に駆け足でバーチャル乗車しましょう。四日市までは沿線に住宅やマンションが建ち並びますが、四日市ー亀山間は田園や森林が広がります。
亀山はJR東海、JR西日本の境界駅で、JR西日本の気動車に乗り換え。加茂行き列車は、伊賀越えの勾配区間に入ります。加太ー柘植間の旧中在家信号場は、かつてスイッチバック式の列車交換設備があり、SLの撮影スポットとして多くのファンを集めました。2019年までに廃止され、今はひっそりしています。
加茂以西は、奈良や大阪への通勤圏。「大和路快速」などに乗車すれば、1時間強で大阪駅に到着できます。
記事:上里夏生
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