日本の鉄道車両を思わせる日立製インターシティ「Nova 1」(画像:日立製作所)

イギリス北部で日本の鉄道技術を活用した「バッテリー電車」の試験走行が始まった。日立製作所グループで海外鉄道事業を手掛ける日立レールは2024年8月末から、新型バッテリーシステムを搭載した高速鉄道車両の走行試験を開始した。

試験期間は今後約8週間で、走行区間はヨーク~マンチェスター空港間、リーズ~リバプール・ライム・ストリート間。日立レールは実験を、イギリスのTransPennine Express(トランスペナイン・エクスプレス)、Angel Trains(エンジェル・トレインズ)の両社と共同で実施する。

非電化の鉄道を走る旅客列車は一般には気動車だが、バッテリー技術の進歩で架線(第3軌条も)のない路線を走る電車が現実化しつつある。テストメニューは、勾配区間の性能向上、回生ブレーキによる充電、燃料と排気ガスの削減、駅での排出量ゼロのバッテリーモードなどだ。

共同事業者のうちトランスペナイン社は、イングランド北部やスコットランドに路線ネットワークを持つ。エンジェル社は、イギリス国鉄の民営化で1994年に誕生した鉄道車両会社で、インターシティ車両を保有する。

試験に供用されるのは、日立がイギリス向けに納入したインターシティ車両「Nova1」(5両編成)。本来はディーゼルエンジンで発電機を駆動する電気式で、実験では発電機代わりにバッテリーで列車を走らせる。

日立が試験で目指すのは、バッテリーだけで最長100キロを走行できる航続性能。イギリスには非電化線区が数多く残るが、高度なバッテリー技術で、非電化区間への導入を目指す。

実験開始に当たり、日立レールのポール・ニューラブ環境技術プログラム部門ヘッドは、「実験で、バッテリー電車がどの程度排気ガスや燃料コストを低減し、環境改善につながるかを見極める。日本、イタリア、イギリスの同士が何年も協力して、実用化に視野に入れた段階に到達した(大意)」とコメントした。

記事:上里夏生